統計学

【統計検定準1級】2015年6月 論述問題 問3【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: オッズ比の信頼区間・ロジスティック回帰の係数解釈・交互作用・シンプソンのパラドックス
  • 前提知識: 対数オッズ比と信頼区間の求め方 / 2×2分割表・ロジスティック回帰モデルの基礎

 

 

問題の概要

男性・女性それぞれと併合した2×2分割表(処置群/対照群 × 成功/失敗)が与えられる。[1] 男女別および併合した場合の各オッズ比とその95%信頼区間を求める。[2] 単純なロジスティック回帰モデルの切片・係数がそれぞれ何を意味するかを示し、各グループの推定値を求める。[3] 性別と処置を同時に組み込んだロジスティック回帰モデルの4つの係数を解釈する。[4] 層別分析と併合分析の結果が異なる理由(シンプソンのパラドックス)について、現実的な例を挙げながら考察する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 各分割表からオッズ比を計算し、対数オッズ比の正規近似で信頼区間を構成する。[2] ロジスティック回帰 \(\log\frac{p}{1-p}=\alpha+\beta z\) に \(z=0,1\) を代入して切片・係数の意味を特定する。[3] 性別ダミー \(x\) と処置ダミー \(z\) および交互作用項 \(xz\) を含むモデルで、4通りの組み合わせを代入して各係数の意味を読み取る。[4] シンプソンのパラドックスの条件を整理し、交絡因子が結果を逆転させる仕組みを実例で説明する。

[1]

対数オッズ比の 95 %信頼区間の求め方はこちらを参照。

男性の場合、

\[OR=\frac{8\times 3}{4\times 5}=1.2\]

であるから、

\begin{eqnarray}
\exp\left[\log 1.2\pm 1.96\times\sqrt{\frac{1}{8}+\frac{1}{5}+\frac{1}{4}+\frac{1}{3}}\right] &=& \exp[0.182\pm 1.96\times 0.953] \\
&=& (\exp(-1.686),\,\exp(2.050)) \\
&=& (0.185,\;7.770)
\end{eqnarray}

女性の場合、

\[OR=\frac{12\times 3}{2\times 15}=1.2\]

であるから、

\begin{eqnarray}
\exp\left[\log 1.2\pm 1.96\times\sqrt{\frac{1}{12}+\frac{1}{15}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}}\right] &=& \exp[0.182\pm 1.96\times 0.992] \\
&=& (\exp(-1.761),\,\exp(2.126)) \\
&=& (0.172,\;8.381)
\end{eqnarray}

併合の場合、

\[OR=\frac{20\times 6}{20\times 6}=1.0\]

であるから、

\begin{eqnarray}
\exp\left[\log 1.0\pm 1.96\times\sqrt{\frac{1}{20}+\frac{1}{20}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}}\right] &=& \exp[0.000\pm 1.96\times 0.658] \\
&=& (\exp(-1.290),\,\exp(1.290)) \\
&=& (0.275,\;3.634)
\end{eqnarray}

[2]

\(z=0\) のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha\]

すなわち、\(\alpha\) の値は対照群での対数オッズとなる。

\(z=1\) のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha+\beta\]

すなわち、\(\beta\) の値は対数オッズ比となる。

従って、

\(\hat{\alpha}\)\(\hat{\beta}\)
男性\(\log{\frac{4}{3}}\approx 0.2878\)\(\log{OR}\approx 0.182\)
女性\(\log{\frac{2}{3}}\approx -0.405\)\(\log{OR}\approx 0.182\)
併合\(\log{\frac{6}{6}}=0\)\(\log{OR}=0\)
[3]

①\(x=0, z=0\)  (女性の対照群)のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha\]

となり、\(\alpha\) は女性の対照群の対数オッズであることがわかる。

\[\hat{\alpha}=-0.405\]


②\(x=0, z=1\)  (女性の処置群)のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha+\beta\]

となり、\(\beta\) は女性の処置群の対数オッズ比であることがわかる。

\[\hat{\beta}=0.182\]


③\(x=1, z=0\)  (男性の対照群)のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha+\gamma\]

となり、\(\gamma\) は対照群での女性に対する男性の対数オッズ比であることがわかる。

\[\hat{\gamma}=\log\frac{4/3}{2/3}\approx 0.693\]


④\(x=1, z=1\)  (男性の処置群)のとき、

\[\log{\frac{p}{1-p}}=\alpha+\beta+\gamma+\xi\]

となる。

\[\hat{\xi}=0\]

\(\xi\) は性別と処置との間の交互作用を表す。

\(\xi=0\) のとき、男女で処置のオッズ比は同じであることを意味している。

[4]

性別が結果の要因となる場合は、男女別の分割表に意味がある。
しかしトランプの場合には、汚れの有無がトランプの札に影響を与えない。
同じ数値例であってもその意味によって個別の分割表で結論を下すべきか、あるいは併合した分割表で結論を下すべきかが異なる。

 

 

よくある質問

Q. 層別のオッズ比は同じなのに併合すると変わるのはなぜですか?

シンプソンのパラドックスが起きています。層(男女)の構成比と結果変数の周辺分布が交絡しているため、単純に合算すると比率の重み付けがずれて見かけのオッズ比が変化します。交絡因子(ここでは性別)が処置・結果の両方と関連しているときに発生します。

Q. ロジスティック回帰の切片 α はどう解釈しますか?

すべての説明変数が 0 のときの対数オッズです。このモデルでは z=0(対照群)の対数オッズに相当し、\(\exp(\hat{\alpha})\) が対照群のオッズになります。

Q. 交互作用項 ξ=0 は何を意味しますか?

男性と女性で処置効果(オッズ比)が等しいことを意味します。交互作用がないとき、処置の効果は性別によらず一定なので、層別ORと等しくなります。ξ≠0 なら性別によって処置効果が異なる(効果修飾)と解釈します。

 

 

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