この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: ポアソン分布への適合度検定・カテゴリ統合によるχ²検定の修正
- 前提知識: ポアソン分布 \(\text{Po}(\lambda)\) の平均・分散がともに \(\lambda\) であること / χ²適合度検定の手順(期待度数の計算・乖離度の集計・棄却域の判断) / 期待度数が小さいセルのカテゴリ統合方法
問題の概要
64年間の台風上陸回数データが与えられている。2つの小問からなる。[1] 上陸回数がポアソン分布に従うかどうかをχ²適合度検定で検証する。まず平均・分散の比較からポアソン分布の妥当性を確認し、パラメータを推定して期待度数を求め、χ²統計量を計算・判定する。さらに期待度数の小さいカテゴリを統合して再検定を行い、当てはまりを比較する。[2] 統合の妥当性を確率の観点から論述する。
解説
解法の方針:[1] ポアソン分布の「平均=分散」という性質を使い、データの平均・分散を比較してポアソン分布の適用可否を判断する。次に \(\hat{\lambda}=\bar{x}\) で期待度数を求め、χ²統計量と自由度を確認して検定する。期待度数が小さいカテゴリは統合して再検定し、当てはまりを比較する。[2] 10回以上の事象が実際に観測されていること・ポアソン近似による生起確率を根拠に、統合の妥当性を論じる。
[1]
(1)
ポアソン分布は期待値と分散が一致する。
分散は \((1.67)^2=2.7889\) となり、平均 2.84 とほぼ一致することから、ポアソン分布に従うのではないかと考えている。
(2)
パラメータ \(\lambda=2.84\) のポアソン分布に従うと仮定したとき、64 年間の上陸数の期待度数(年)は以下の表のようになる。
| 上陸数(回) | 観測度数(年) | 確率 | 期待度数(年) |
|---|---|---|---|
| 0 | 4 | 0.058 | 3.74 |
| 1 | 7 | 0.166 | 10.62 |
| 2 | 17 | 0.236 | 15.08 |
| 3 | 18 | 0.223 | 14.28 |
| 4 | 10 | 0.158 | 10.14 |
| 5 | 5 | 0.090 | 5.76 |
| 6 | 2 | 0.043 | 2.72 |
| 7 | 0 | 0.017 | 1.11 |
| 8 | 0 | 0.006 | 0.39 |
| 9 | 0 | 0.002 | 0.12 |
| 10 以上 | 1 | 0.001 | 0.05 |
| 計 | 64 | 1.000 | 64.00 |
(3)
適合度の \(\chi^2\) 統計量の値は 24.28 であることがわかる。
\[24.28 > \chi^2_{9}(0.05)=16.92\]
となり、帰無仮説は棄却される。
「10 以上」に対する乖離度が他と比較してとても大きいことが要因である。
(4)
上陸回数 6 回以上をまとめると以下の表のようになる。
| 上陸数 | 観測度数 | 確率 | 期待度数 | 乖離度 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 4 | 0.058 | 3.74 | 0.02 |
| 1 | 7 | 0.166 | 10.62 | 1.23 |
| 2 | 17 | 0.236 | 15.08 | 0.24 |
| 3 | 18 | 0.223 | 14.28 | 0.97 |
| 4 | 10 | 0.158 | 10.14 | 0.00 |
| 5 | 5 | 0.090 | 5.76 | 0.10 |
| 6 以上 | 3 | 0.068 | 4.38 | 0.44 |
| 計 | 64 | 1.000 | 64.00 | 3.01 |
\[3.01 < \chi^2_{5}(0.05)=11.07\]
となり、帰無仮説は棄却されない。
従って、上陸回数 6 回以上をまとめた方がポアソン分布の当てはまりが良い。
[2]
上陸回数が 6 回以上となる確率は、観測値から計算した場合は、
\[P(X \geq 6) = 3/64 = 0.047\]
ポアソン分布による近似の場合、
\[P(X \geq 6) = 0.043+0.017+0.006+0.002+0.001 = 0.069\]
従って、0.047 から 0.069 程度の確率となると予想される。
一方で、上陸回数 10 回以上の年については約 0.001 である。
ポアソン近似によれば 1000 回に 1 回はその事象が発生することを意味し、実際にその事象が起こっていることから除外できないので、「上陸回数 6 回以上をまとめる」ことが良いと考えられる。
よくある質問
Q. なぜカテゴリを統合するとχ²検定の結果が変わるのですか?
期待度数が極端に小さいカテゴリ(目安: 5未満)があると、乖離度 \((O-E)^2/E\) が不安定に大きくなり、χ²統計量全体を押し上げてしまう。カテゴリを統合することで期待度数を増やし、χ²近似の精度を確保できる。今回の「10以上」は期待度数0.05と極めて小さいため、統合後の結果の方が信頼できる。
Q. 適合度検定の自由度はどう決まりますか?
χ²適合度検定の自由度は「カテゴリ数 − 1 − 推定したパラメータ数」で求める。今回はパラメータ \(\lambda\) を標本平均で1つ推定しているため、統合前(11カテゴリ)では \(11-1-1=9\)、統合後(7カテゴリ)では \(7-1-1=5\) となる。
Q. ポアソン分布の「平均=分散」をどう確認に使うのですか?
実データの標本平均と標本分散を計算し、両者がほぼ一致していればポアソン分布への当てはまりを仮定する根拠になる。今回は平均2.84、分散 \((1.67)^2 \approx 2.79\) でほぼ一致しており、ポアソン分布の仮定が妥当と判断できる。大きく乖離している場合は負の二項分布など過分散モデルを検討する。



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