この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: カイ二乗検定(独立性の検定)・オッズ比・サンプルサイズの影響
- 前提知識: \(m \times n\) クロス集計表の自由度 \((m-1)(n-1)\) / ピアソンのカイ二乗統計量の定義 / 対数オッズ比の標準誤差と信頼区間の計算方法
問題の概要
2×2クロス集計表を用いた独立性の検定に関する2小問からなる。[1] ピアソンのカイ二乗統計量の値を与えられた状態で、検定の有意性とオッズ比の信頼区間の1の包含を判断する。[2] 表の全数値を1.5倍したとき、カイ二乗統計量とオッズ比がそれぞれどう変化するかを問う。
解説
解法の方針:[1] 自由度1のカイ二乗分布の臨界値と統計量を比較して有意性を判定し、帰無仮説が棄却できなければ OR ≈ 1 と推測して信頼区間を導く。[2] サンプルサイズを一定倍した場合の統計量とオッズ比のスケーリングの性質を理解して答える。
[1]
\(m×n\) のクロス集計表の場合、自由度 \((m-1)×(n-1)\) のカイ二乗分布を用いて検定を行う。
今回、ピアソンのカイ二乗統計量 \(\chi^2\) は、自由度\((2-1)×(2-1)=1\) のカイ二乗分布に従う。
\[\chi_{0.05}^2(1)=3.84\]
であるから、\(2.73 < 3.84\) より、 検定は 5 %有意ではない。
帰無仮説が棄却できない→効果に差がない→\(OR\approx 1\) と考えられるため、\(OR\) に基づく信頼区間は 1 を含むと推測できる。

正直、厳密な計算は大変なので、推測で回答した方が良さそう。
以下に厳密な計算を記載する。
対数オッズ比 \(\log(OR)\) の標準誤差 \(SE(\log(OR))\) が、
\[SE(\log(OR))=\sqrt{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}+\frac{1}{d}}=0.604\]
より(参考)、対数オッズ比の 95 %信頼区間は、
\[0.981\pm 1.96×0.604=(-0.203, 2.165)\]
となる。
従って、オッズ比の 95 %信頼区間は、
\[(\exp(-0.203), \exp(2.165))=(0.816, 8.715)\]
となり、\(OR\) に基づく信頼区間は 1 を含む。
[2]
表の数値をすべて 1.5 倍すると、カイ二乗統計量の値は 1.5 倍の 4.095 となり、\(\chi_{0.05}^2(1)=3.84\) を超えるので、検定は 5 %有意になる。
オッズ比の値は変わらない。
よくある質問
Q. サンプルサイズを増やすとカイ二乗統計量がなぜ比例して大きくなるのですか?
ピアソンのカイ二乗統計量は \(\chi^2 = \sum \frac{(O-E)^2}{E}\) で計算される。全セルを \(k\) 倍すると観測度数 \(O\) も期待度数 \(E\) も \(k\) 倍になり、各項が \(k\) 倍されるため統計量全体も \(k\) 倍になる。今回は \(k=1.5\) なので \(2.73 \times 1.5 = 4.095\) となる。
Q. オッズ比はサンプルサイズを増やしても変わらないのはなぜですか?
オッズ比は \(OR = \frac{ad}{bc}\) で計算される比であるため、全セルを同じ倍率 \(k\) でスケールしても \(\frac{(ka)(kd)}{(kb)(kc)} = \frac{ad}{bc}\) となり値は変わらない。ただし信頼区間の幅はサンプルサイズが大きくなるほど狭くなる(標準誤差が減少するため)。
Q. 有意でなかったとき「信頼区間が1を含む」と推測できる根拠は?
カイ二乗検定による独立性の検定と、オッズ比の信頼区間が1を含むかどうかは同じ情報を別の角度から見たものであり、理論的に整合する。帰無仮説「OR = 1(独立)」が棄却できないということは、OR = 1 が統計的に否定できない範囲にあることを意味し、その信頼区間は必ず1を含む。



コメント