統計学

【統計検定準1級】2017年6月 論述問題 問1【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 主成分分析(PCA)——相関係数・固有値・寄与率・信頼区間・AICによるモデル選択
  • 前提知識: 標本分散共分散行列の読み方 / 相関係数の定義 / 主成分の解釈と寄与率 / \(\chi^2\) 分布を使った信頼区間 / 赤池情報量規準(AIC)の比較方法

 

 

問題の概要

4科目(国語・数学・英語・理科)のテストデータに対して主成分分析を行う問題。[1] 標本分散共分散行列から国語と数学の相関係数を計算する。[2] 第1・第2主成分を解釈し、第2主成分までの累積寄与率を求める。[3] 第1固有値の95%信頼区間を \(\chi^2\) 分布を使って導出する。[4] スクリープロットとAICを用いて最適なモデルを選択する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 分散共分散行列から各変数の分散を読み取り、共分散との比として相関係数を計算する。[2] 固有ベクトルの係数の符号・大きさから主成分の意味を解釈し、固有値の比から累積寄与率を計算する。[3] \(7\ell_1/\lambda_1 \sim \chi^2(7)\) の近似を使い、付表の上下2.5%点から \(\lambda_1\) の信頼区間を逆算する。[4] AICが最小のモデルを採用する。

[1]

標本分散共分散行列より、国語の分散 \(V(X_{国語})\) は 428.6、数学の分散 \(V(X_{数学})\) は 371.4 であるから、国語と数学の相関係数は、

\begin{eqnarray}
r_{X_{国語},X_{数学}} &=& \frac{\mathrm{Cov}(X_{国語},X_{数学})}{\sqrt{V(X_{国語})}\sqrt{V(X_{数学})}} \\
&=& \frac{42.9}{\sqrt{428.6 \times 371.4}} \\
&\approx& 0.1075
\end{eqnarray}

と求まる。

[2]

第1主成分は総合的な学力、第2主成分は文理のバランスを表す軸と解釈できる。

第2主成分までの累積寄与率は、

\[\frac{798+560}{798+560+160+10.5}\approx 0.889\]

となるので、失われた情報は 11 %程度とわかる。

[3]

問題文の条件より、母集団が 4 変数正規分布に従うとき、\(7\ell_1 / \lambda_1\) が自由度 7 の \(\chi^2\) 分布に近似的に従うことが示されている。

95 %信頼区間を求めるため、自由度 7 の \(\chi^2\) 分布において、両端 2.5\% ずつを除いた範囲の値を付表から求める。

\[P\left( 1.69 < \frac{7\ell_1}{\lambda_1} < 16.01 \right) = 0.95\]

この不等式を \(\lambda_1\) について解くと、

\[\frac{7 \times 798}{16.01} < \lambda_1 < \frac{7 \times 798}{1.69}\]

となる。

よって、\(348.9 < \lambda_1 < 3305\) となり、母集団における第 1 固有値の推定範囲が得られる。

[4]

分散共分散行列の構造について、4つのモデル \(M_0 \sim M_3\) が提示されている。

これらは固有値がどこまで等しいか(等方性があるか)を仮定したものである。

  • スクリープロットの確認:図2を見ると、第1固有値から第3固有値までは値が大きく減少しており、各主成分が独立した情報を持っていることが示唆される。
  • AIC(赤池情報量規準)による判定:統計モデルの選択では、AICの値が最小となるモデルを採用するのが一般的である。与えられた表を確認すると、各モデルのAICは以下の通りである。
    • \(M_0:25.4\)
    • \(M_1:29.1\)
    • \(M_2:26.2\)
    • \(M_3:20.0\)

\(M_3\) のAICが最も小さいため、すべての固有値が異なると仮定する(あるいは特定の等号制約を設けない)モデル \(M_3\) を採用するのが妥当である。

 

 

よくある質問

Q. 相関係数を計算するとき、分散共分散行列のどこを使えばいいですか?

対角成分が各変数の分散、非対角成分が共分散を表す。相関係数は \(r = \mathrm{Cov}(X,Y)/\sqrt{V(X)V(Y)}\) なので、対応する行・列の対角成分と非対角成分の3つの値だけを使って計算できる。

Q. 固有値の信頼区間はなぜ \(\chi^2\) 分布を使うのですか?

多変量正規分布の標本固有値は、自由度が標本サイズ \(n-1\) に関連する \(\chi^2\) 分布で近似できることが知られている。この問題では \(7\ell_1/\lambda_1 \sim \chi^2(7)\) という近似が与えられているので、その前後の不等式変形で \(\lambda_1\) の区間を直接求める。

Q. AICでモデルを選ぶとき、数値が小さいほど良いのはなぜですか?

AIC は「対数尤度(当てはまりの良さ)」からパラメータ数のペナルティを引いた指標で、値が小さいほど情報損失が少ないことを意味する。単純に尤度だけで比べるとパラメータを増やすほど有利になるが、AICはその過学習を抑制するため、複数モデルの比較に広く使われる。

 

 

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