統計学

【統計検定準1級】2017年6月 論述問題 問2【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: ポアソン過程・間引きポアソン過程・強度パラメータの推定
  • 前提知識: ポアソン過程の定義(独立増分・稀な事象)/ 累積発生数の期待値 \(E[N_t] = \lambda t\) / 全期待値の法則 / 間引き(thinning)によるポアソン過程の保存性

 

 

問題の概要

教科書の誤植発見をポアソン過程でモデル化する問題。4小問構成で、[1] ポアソン過程を定義づける事象の性質を答える、[2] 累積発生数のグラフから強度パラメータ \(\lambda\) を推定する、[3] 学生が確率 \(q\) で誤植を発見するとき1ページあたりの期待発見数を求める、[4] 教授の再調査データと学生の発見数から発見率 \(q\) を推定する。

 

 

解説

解法の方針:[1] ポアソン過程の事象が満たすべき2条件(独立性・稀少性)を言葉で述べる。[2] 累積発生数の期待値が原点を通る直線であることを利用し、グラフの傾きから \(\hat{\lambda}\) を計算する。[3] 全期待値の法則(\(E[X]=E[E[X|N_t]]\))を用いて期待発見数を \(q\lambda t\) と導く。[4] 教授の再調査で得た \(\hat{\lambda}\) と学生の平均発見数から \(\hat{q}\) を算出する。

[1]

それ以前の事象の発生と独立、かつ、発生確率が極めて低い事象。

[2]

ポアソン過程において、時間(ページ数) \(t\) までの発生回数の期待値は \(E[N_t] = \lambda t\) である。つまり、累積発生回数は平均的に原点を通る直線(傾き \(\lambda\))に沿って増加する。

グラフを見ると、階段状のプロットが原点 (0, 0) と 20 個目の発見地点 \((t_{20}, 20)\) を結ぶ破線の近くを推移していることがわかる。

この破線の傾きを計算すると、

\[\hat{\lambda} = \frac{20}{t_{20}} = \frac{20}{10.072} \approx 1.9857\]

となる。

これは 2.0 に非常に近いため、このプロセスの強度が \(\lambda = 2.0\) であるという仮定は妥当であると判断できる。

[3]

学生が全ての誤植を見つけるわけではなく、確率 \(q\) で発見し、 \(1-q\) で見逃す状況を考える。

\(N_t\) 個の誤植に対し、各誤植を発見したかどうかを示す変数を \(\epsilon_i \in \{0, 1\}\) (確率 \(q\) で 1)とすると、学生が発見する総数 \(X_t\) は \(X_t = \sum_{i=1}^{N_t} \epsilon_i\) と書ける。

この期待値 \(E[X_t]\) は、条件付き期待値の性質(全期待値の法則)を用いると、

\[\begin{aligned} E[X_t] &= E[E[X_t | N_t]] \\ &= E[N_t \cdot q] \\ &= q \cdot E[N_t] \\ &= q \lambda t \end{aligned}\]

と求まる。

つまり、学生が発見する誤植の期待値は、全体の期待値 \(\lambda t\) に発見率 \(q\) を掛けたものになる。

[4]

教授がさらに詳しく調べた結果、300 ページで合計 558 個 の誤植が見つかった。

これに基づき、1 ページあたりの真の誤植数(強度) \(\lambda\) を再推定すると、

\[\hat{\lambda} = \frac{558}{300} = 1.86\]

となる。

学生が最初に見つけた誤植の平均は 1ページ当たり 1.53 個であった。

[3] の結果から、1 ページあたりの発見数の期待値(\(t=1\) のとき)は \(q\lambda\) である。

従って、

\[q \hat{\lambda} \approx 1.53\]

が成り立つ。

ここに先ほどの \(\hat{\lambda} = 1.86\) を代入すると、

\[\hat{q} = \frac{1.53}{1.86} \approx 0.8226\]

よって、学生の誤植発見率 \(q\) は 約 82 %であると見積もることができる。

 

 

よくある質問

Q. ポアソン過程の「強度 \(\lambda\)」はどうやって推定するのですか?

最尤推定量は観測期間中の総発生数 \(n\) を観測時間 \(T\) で割った \(\hat{\lambda} = n/T\) になる。グラフの文脈では、累積発生数の傾き(原点と最後の点を結ぶ直線の傾き)がこれに対応する。

Q. 間引きポアソン過程とは何ですか?

強度 \(\lambda\) のポアソン過程の各イベントを独立に確率 \(q\) で残す操作を「間引き(thinning)」と呼ぶ。残ったイベント列は強度 \(q\lambda\) のポアソン過程になる。今回の問題ではこの性質を利用して、学生の発見数が期待値 \(q\lambda t\) になることを導いている。

Q. 全期待値の法則(\(E[X] = E[E[X|N]]\))はなぜ使えるのですか?

\(N_t\) が確率変数であるため、\(X_t = \sum_{i=1}^{N_t} \epsilon_i\) を直接計算しにくい。\(N_t = n\) と固定すれば \(E[X_t | N_t = n] = nq\) と簡単に計算でき、あとは \(N_t\) の分布で平均をとることで \(E[X_t] = q\lambda t\) が得られる。「条件付きで簡単になる量があるとき」に使う典型的なテクニック。

 

 

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