この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: 2水準直交実験の一部実施計画(\(2^{k-p}\) 計画)・交絡構造・分散分析・最適条件の選定
- 前提知識: 直交表 \(L_8(2^7)\) の列の割り付け方 / 定義関係と交絡の求め方 / 一元配置・多因子分散分析の F 検定 / 主効果と交互作用の水準比較
問題の概要
5つの小問からなる。[1] 4因子2水準の \(2^{4-1}\) 一部実施計画において、因子 \(A\) の主効果と交絡する効果を求める。[2] 交互作用 \(A \times B\) と交絡する2因子交互作用を特定する。[3] 与えられたデータから分散分析表を完成させ、有意な効果を判定する。[4] 有意な効果の水準組み合わせを比較し、生産量を最大化する最適条件を求める。[5] 5因子を8回の実験で調べる \(2^{5-2}\) 計画を構成する。
解説
解法の方針:[1] 定義関係 \(I = ABCD\) に因子 \(A\) を乗じて交絡効果を求める。[2] 同様に \(A \times B\) を乗じて交絡する2因子交互作用を特定する。[3] 各列の平方和・自由度・F値を計算し、基準値と比較して判定する。[4] 有意な項の水準別平均を比較して最大となる組み合わせを選ぶ。[5] \(L_8(2^7)\) の交互作用列に新因子を割り付けて定義関係を構成する。
[1]
本実験は \(2^{4-1}\) 一部実施計画であり、因子 \(D\) を \(D = A \times B \times C\) として割り付けている。
直交表 \(L_8(2^7)\) において、因子 \(A, B, C\) をそれぞれ第 1 列、第 2 列、第 4 列に割り付けると、それらの相互作用は以下の列に対応する。
- \(A \times B \to\) 第 3 列
- \(A \times C \to\) 第 5 列
- \(B \times C \to\) 第 6 列
- \(A \times B \times C \to\) 第 7 列
ここで、因子 \(D\) を第 7 列(\(A \times B \times C\))に割り付けているため、定義関係は \(I = A \times B \times C \times D\) となる。
因子 \(A\) の主効果と交絡する効果を求めるには、定義関係に \(A\) を乗じればよい。
[A \times I = A \times (A \times B \times C \times D) = B \times C \times D]
したがって、因子 \(A\) は3元交互作用 \(B \times C \times D\) と交絡する。
一般に 3 元以上の交互作用は無視できるほど小さいと考えるため、因子 \(A\) の主効果は、他の 2 因子交互作用とは交絡していないと言える。
[2]
交互作用 \(A \times B\) と交絡する関係は、
[(A \times B) \times I = (A \times B) \times (A \times B \times C \times D) = C \times D]
と求まる。
この式から、交互作用 \(A \times B\) は交互作用 \(C \times D\) と完全に交絡していることがわかる。
従って、交互作用 \(A \times B\) と交絡関係にある 2 因子交互作用は \(C \times D\) である。
[3]
分散分析表は、
| 要因 | 平方和 (S) | 自由度 (ϕ) | 平均平方 (V) | F 値 | 判定 |
| \(A\) | 220.50 | 1 | 220.50 | 6.04 | 有意 |
| \(B\) | 264.50 | 1 | 264.50 | 7.25 | 有意 |
| \(A \times B\) | 480.50 | 1 | 480.50 | 13.16 | 有意 |
| \(C\) | 144.50 | 1 | 144.50 | 3.96 | 有意 |
| \(D\) | 4.50 | 1 | 4.50 | 0.12 | 無視可 |
| \(e\) (残差) | 73.00 | 2 | 36.50 | – | – |
| 計 | 1187.50 | 7 | – | – | – |
判定基準を \(F = 2.0\) とすると、\(A, B, A \times B, C\) が有意(または効果がある)と判断できる。
[4]
生産量 \(y\) を最大化するためには、有意な項の各水準を検討する必要がある。
- 交互作用 \(A \times B\) の検討
\(A \times B\) が有意であるため、\(A\) と \(B\) は個別に選ぶのではなく、組み合わせで判断する。- \((A_1, B_1)\) の平均:46.5
- \((A_1, B_2)\) の平均:73.5
- \((A_2, B_1)\) の平均:72.5
- \((A_2, B_2)\) の平均:68.5
最も値が大きいのは \((A_1, B_2)\) である。
- 因子 \(C\) の検討:
- \(C_1\) の平均:69.5
- \(C_2\) の平均:61.0
大きい方の \(C_1\) を選択する。
- 因子 \(D\) の検討:有意差がないため、\(D_1, D_2\) どちらでもよい。
従って、最適な条件は \(A_1, B_2, C_1\) となる。
[5]
因子が \(A, B, C, D, E\) の5つあり、実験回数を 8 回に抑える場合、直交表 \(L_8(2^7)\) を用いて 1/4 実施計画を立てる。
基本となる因子を \(A, B, C\) とし、残りの因子を以下のように割り付ける。
- \(D = A \times B\)
- \(E = A \times C\)
このとき、定義関係は \(I = ABD = ACE = BCDE\) となる。
この設計では、主効果が 2 因子交互作用と交絡する。
- \(A = BD = CE\)
- \(B = AD = CDE\)
- \(C = AE = BDE\)
この計画で調べることができる 2 因子交互作用は、最大で 2 つである。
具体的には、主効果と交絡していない \(B \times C\)(または \(D \times E\)) および \(B \times E\)(または \(C \times D\)) の組み合わせであれば、主効果とは独立して評価が可能である。
しかし、それ以外の交互作用は主効果と重なるため、個別に評価することはできない。
よくある質問
Q. 定義関係から交絡効果を求めるとき、なぜ定義関係に因子を「乗じる」のですか?
2水準計画では各因子は \(\pm1\) の値を取り、同じ因子を2回掛けると \(A^2 = I\)(単位元)になる。この性質を利用して、定義関係 \(I = ABCD\) に \(A\) を乗じると \(A = BCD\) が得られ、\(A\) の主効果と \(BCD\) が区別できないことが分かる。交絡関係の導出は「定義関係に注目する効果を乗じる」だけで機械的に求められる。
Q. 交互作用が有意なとき、なぜ主効果の水準を個別に比較してはいけないのですか?
交互作用が有意ということは、一方の因子の効果がもう一方の水準によって変わることを意味する。たとえば \(A \times B\) が有意な場合、\(A_1\) が \(A_2\) より優れるかどうかは \(B\) の水準次第で逆転しうる。このため、\(A\) と \(B\) の水準を組み合わせた平均値を直接比較して最適条件を選ぶ必要がある。
Q. \(2^{5-2}\) 計画で「調べられる2因子交互作用が最大2つ」とはどういう意味ですか?
分解能 III の計画では主効果が2因子交互作用と交絡するため、多くの2因子交互作用は主効果と同時には推定できない。交絡していない2因子交互作用のペア(例: \(BC\) と \(BE\))だけが独立に推定可能であり、その上限が2つとなる。分解能 IV 以上の計画を使えばより多くの2因子交互作用を推定できるが、実験回数が増える。



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