この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: 主成分分析(PCA)・累積寄与率・バイプロット・AIC(赤池情報量規準)
- 前提知識: 固有値・固有ベクトルの基礎 / 寄与率 = 固有値 ÷ 固有値の総和 / AIC = -2×最大対数尤度 + 2×パラメータ数
問題の概要
多変数データに対する主成分分析の出力表(各主成分の寄与率・固有ベクトル)とAICグラフが与えられる。[1] 累積寄与率が初めて80%を超える主成分数を求める。[2] 固有ベクトルの値をもとにバイプロット上の正しいグラフを選ぶ。[3] AICが最小となるモデル番号を読み取る。[4] 主成分分析・AICに関する記述の正誤を判断する。
解説
解法の方針:[1] 寄与率を第1主成分から順に加算し、累積寄与率が80%を初めて超える時点の主成分数を確認する。[2] 各変数のPC1・PC2の値の符号から象限を特定し、一致するバイプロットを選ぶ。[3] AICグラフの最小値を示すモデルを読み取る。[4] PCAとAICの性質に関する各選択肢を吟味する。
[1]
主成分分析において、各主成分がデータ全体の変動をどの程度説明しているかを示す指標が「寄与率」である。累積寄与率は、第1主成分から順に寄与率を加算していくことで求められる。
表の「寄与率」の行から順に加算を行う。
- 第1主成分 (PC1):0.292
- 第2主成分まで:0.292 + 0.193 = 0.485
- 第3主成分まで:0.485 + 0.172 = 0.657
- 第4主成分まで:0.657 + 0.127 = 0.784
- 第5主成分まで:0.784 + 0.117 = 0.901
第 5 主成分まで加えることで 90.1 % となり、初めて 80 % を超える。
[2]
表の「固有ベクトル」の列から、\(x_1\) から \(x_4\) までのPC1(横軸)とPC2(縦軸)の値を抜き出し、その符号と座標を確認する。
| 変数 | PC1 (横軸) | PC2 (縦軸) | 象限 |
| \(x_1\) | +0.288 | -0.349 | 第4象限 (右下) |
| \(x_2\) | -0.416 | +0.319 | 第2象限 (左上) |
| \(x_3\) | +0.250 | +0.578 | 第1象限 (右上) |
| \(x_4\) | -0.593 | -0.014 | 第3象限 (左下・軸に近い) |
この座標分布と一致するグラフを探すと、グラフ ① が適切である。
[3]
AIC(赤池情報量規準)は、モデルの適合度と複雑さ(パラメータ数)のバランスを評価する指標である。予測の観点からは、AICの値が最小であるモデルが最も適切であるとされる。
図1の「各モデルのAICの値」を確認すると、グラフが最も低い値(ボトム)を示しているのは モデル 4 である。
[4]
各選択肢を吟味する。
- ×:PCAにおいて標準化は「推奨」されることが多いが、単位が同じ場合など、共分散行列を用いてそのまま解析することもあるため「不可欠」とは言えない。
- ○:相関行列(標準化されたデータ)に対する主成分分析では、主成分荷重(因子負荷量)は、その主成分と元の変数との相関関係に一致する。これは主成分分析の重要な性質の一つである。
- ×:AICは、モデル間に包含関係(ネスト構造)がなくても、同じデータセットに対するモデルであれば比較可能である。
- ×:AICはモデル同定の一致性を持たない。サンプルサイズ \(n\) を無限大にしても、真のモデルを選択する確率は 1 に収束せず、過剰に複雑なモデルを選ぶ傾向がある(一致性を持つのはBICである)。
- ×:AICは計算式(最大対数尤度とパラメータ数)から算出できるため、一般に交差検証法(データを分割して何度も学習・評価を繰り返す)よりも計算負荷は小さい。
よくある質問
Q. 寄与率と累積寄与率の違いは何ですか?
寄与率は各主成分が単独でデータの変動を説明する割合(固有値 ÷ 全固有値の和)。累積寄与率はそれを第1主成分から順に足し合わせた値。「何個の主成分で80%の変動を説明できるか」を判断する際に使う。
Q. バイプロットで変数の位置を決める際のポイントは?
固有ベクトルの第1成分(PC1)が横軸、第2成分(PC2)が縦軸の座標になる。符号だけで象限を絞り込めるので、まず各変数がどの象限に入るかをリストアップしてからグラフと照合すると確実。
Q. AICとBICの違いで試験に出やすい点は?
AICは予測精度の観点でモデルを選ぶ指標で、一致性(サンプルサイズ→∞で真モデルを選ぶ性質)を持たない。BICはペナルティが大きく、一致性を持つ。「ネスト関係がなくても比較可能」「最小を選ぶ」はAIC・BIC共通の性質。



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