この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: ロジスティック回帰・ベルヌーイ分布・ロジット変換
- 前提知識: ベルヌーイ分布と二項分布の関係 / ロジット関数 \(\text{logit}(\pi) = \log\frac{\pi}{1-\pi}\) / シグモイド関数による確率変換
問題の概要
スペースシャトルの気温と部品破損の関係をロジスティック回帰で分析する問題。2値の破損データが従う確率分布を特定し、ロジットモデルの正しい形式を選ぶ。さらに推定された係数を用いて、破損確率が50%となる気温と、事故当日の気温(31°F)における破損確率を計算する。
解説
解法の方針:[1] 0/1の2値データが従う分布はベルヌーイ分布(=試行回数1の二項分布)。[2] ロジスティック回帰はπそのものでなくロジット(対数オッズ)を線形結合でモデル化する。[3] π=0.5のとき対数オッズ=0を利用してxを逆算する。[4] x=31を代入して対数オッズを計算し、シグモイド変換で確率を求める。
[1]
データ \(y_i\) は「破損あり(1)」または「破損なし(0)」の 2 値をとる変数である。
このように、1回の試行で成功か失敗かのいずれか一方が起こる確率分布をベルヌーイ分布と呼ぶ。
数式では \(Bin(1, \pi_i)\) と表記される。これは「試行回数1、成功確率 \(\pi_i\) の二項分布」と同義である。
従って、正解は ① である。
[2]
ロジスティック回帰分析では、確率 \(\pi_i\) そのものではなく、そのロジット(対数オッズ)を線形結合でモデル化する。
\[\text{logit}(\pi_i) = \log \left( \frac{\pi_i}{1 – \pi_i} \right) = \alpha + \beta x_i\]
ここで、\(\alpha\) は切片(Intercept)、\(\beta\) は説明変数(Temperature)の係数である。
従って、正解は ① である。
[3]
出力結果(Coefficients)より、以下の推定値が得られている。
- 切片 \(\hat{\alpha} = 15.0429\0)
- 気温の係数 \(\hat{\beta} = -0.2322\)
破損確率 \(\pi_i = 0.5\) のとき、オッズ \(\frac{\pi_i}{1 – \pi_i}\) は \(\frac{0.5}{0.5} = 1\) となる。
このとき、対数オッズは \(\log(1) = 0\) である。[2] の式に代入すると、
\[0 = 15.0429 – 0.2322 \times x\]
これを \(x\) について解くと、
\[x = \frac{15.0429}{0.2322} \approx 64.784…\]
選択肢の中で最も近いのは ④ 64.8 である。
[4]
事故当日の気温 \(x = 31\) をモデルの式に代入し、対数オッズを計算する。
\[\log \left( \frac{\pi}{1 – \pi} \right) = 15.0429 – (0.2322 \times 31)\]
\[15.0429 – 7.1982 = 7.8447\]
次に、この対数オッズから確率 \(\pi\) を求める。
\[\frac{\pi}{1 – \pi} = e^{7.8447}\]
\[\pi = \frac{1}{1 + e^{-7.8447}}\]
\(e^7 \approx 1096$、$e^8 \approx 2980\) であることを考えると、\(e^{7.8447}\) は非常に大きな値(およそ 2550 程度)になる。
よって、\(\pi = \frac{2550}{1 + 2550} \approx 0.9996\) となり、破損確率は極めて高いことがわかる。
従って、正解は ⑤ 0.9996 である。
よくある質問
Q. ベルヌーイ分布と二項分布はどう違いますか?
ベルヌーイ分布は「1回の試行」で成功(1)か失敗(0)かをとる分布。二項分布は「n回の独立な試行」での成功回数の分布。ベルヌーイ分布は \(Bin(1, \pi)\) と書けるので、試行回数 n=1 の二項分布の特殊ケースと理解するとよい。
Q. なぜ確率πをそのまま線形モデルにしないのですか?
確率は0〜1の範囲に収まるが、線形結合 \(\alpha + \beta x\) は任意の実数値をとるため、直接モデル化すると範囲外の値が出てしまう。ロジット変換 \(\log\frac{\pi}{1-\pi}\) で確率を実数全体に写してから線形モデルを当てはめることで、この問題を回避できる。
Q. π=0.5のとき対数オッズがゼロになるのはなぜですか?
\(\pi = 0.5\) のとき、オッズは \(\frac{0.5}{0.5} = 1\) となり、\(\log(1) = 0\) だから。これはロジスティック回帰の「決定境界」(破損ありと破損なしが五分五分になる点)に対応する。



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