統計学

【統計検定準1級】2019年6月 選択問題及び部分記述問題 問12【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: AR(2)モデルの定常条件・MA(q)モデルの自己相関関数とコレログラム
  • 前提知識: ARモデルの特性方程式 / MAモデルの自己共分散の計算 / コレログラムの読み方

 

 

問題の概要

2つの小問からなる。[1] \(AR(p)\) モデルの定常条件(特性方程式の根の絶対値がすべて1より大きい)を用いて、\(a_1 = a_2 = a > 0\) のときに定常となる \(a\) の必要十分条件を求める。[2] 与えられたコレログラムを読み取り、ラグ2でカットオフが生じている理由を \(MA(q)\) モデルの自己相関関数の性質から説明し、適切な次数 \(q\) を推測する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 特性方程式を立て、解の公式で2根を求め、正の根が1を超える条件を整理して \(a\) の範囲を導く。[2] コレログラムのカットオフラグを読み取り、\(MA(q)\) の自己相関が \(k > q\) でゼロになる性質と照合して次数を特定する。

[1]

1. 特性方程式を立てる

問題文にある通り、\(AR(p)\) モデルが定常であるための必要十分条件は、特性方程式:

\[1 – a_1 z – a_2 z^2 – \dots – a_p z^p = 0\]

のすべての解(根)の絶対値が1より大きいことである。

今回の条件 \(a_1 = a_2 = a\) を代入すると、方程式は以下のようになる。

\[1 – az – az^2 = 0 \quad \dots \text{①}\]

2. 解の条件を吟味する

①の解を \(z\) とすると、\(z^2 + z – \frac{1}{a} = 0\) と書き換えられる。

解の公式より、

\[z = \frac{-1 \pm \sqrt{1 + \frac{4}{a}}}{2}\]

となる。この2つの解の絶対値がともに1より大きい必要がある。

条件 \(0 < a\) より、\(\sqrt{1 + \frac{4}{a}} > 1\) であるから、2つの解は一つが正、一つが負の実数解となる。

  • 負の解: \(z_1 = \frac{-1 – \sqrt{1 + 4/a}}{2}\)
  • 正の解: \(z_2 = \frac{-1 + \sqrt{1 + 4/a}}{2}\)

\(|z_1| = \frac{1 + \sqrt{1 + 4/a}}{2}\) は、常に1より大きいため問題ない。

従って、\(|z_2| > 1\) すなわち \(z_2 > 1\) であればよい。

\[\frac{-1 + \sqrt{1 + \frac{4}{a}}}{2} > 1\]

\[\sqrt{1 + \frac{4}{a}} > 3\]

\[1 + \frac{4}{a} > 9\]

\[\frac{4}{a} > 8 \implies a < \frac{1}{2}\]

与えられた条件 \(0 < a\) と合わせると、求める必要十分条件は \(0 < a < \frac{1}{2}\) である。

[2]

1. コレログラムの読み取り

図1を見ると、ラグ(LAG)が 1 と 2 のときに自己相関が有意に高く、ラグ 3 以降は点線(有意水準5%の限界値)の内側に収まり、ほぼ 0 とみなせる。

このように、あるラグを境に自己相関が突然消える現象を 「裁断(カットオフ)」 と呼ぶ。

2. 数式を用いた理由説明

\(MA(q)\) モデルの自己相関関数 \(\rho(k)\) は、以下の性質を持つ。

  • \(k \le q\) のとき: \(\rho(k) \neq 0\)
  • \(k > q\) のとき: \(\rho(k) = 0\)

具体的に、\(MA(q)\) モデル \(X_t = c + \epsilon_t + \sum_{i=1}^{q} b_i \epsilon_{t-i}\) において、自己共分散 \(\gamma(k) = E[(X_t – \mu)(X_{t-k} – \mu)]\) を計算すると、

\[\gamma(k) = \begin{cases} \sigma^2 \sum_{i=0}^{q-k} b_i b_{i+k} & (k = 0, 1, \dots, q) \\ 0 & (k > q) \end{cases}\]

(ただし \(b_0 = 1\) とする)

図1ではラグ \(k=2\) までは有意な相関があり、ラグ \(k=3\) 以降で \(\rho(k) \approx 0\) となっている。

この「ラグ 2 での裁断」という特徴は、\(MA(2)\) モデルの理論的な自己相関関数の挙動と一致する。

従って、次数は \(q = 2\) と推測できる。

 

 

よくある質問

Q. ARモデルの定常条件はなぜ「根の絶対値 > 1」なのですか?

特性方程式の根の絶対値が1以下だと、過去のショックが減衰せず時系列が発散してしまうため。根の絶対値が全て1より大きいとき、インパルス応答が減衰し、プロセスが定常になる。単位円の「外側」に根があるという表現も同義。

Q. MAモデルとARモデルのコレログラム・偏自己相関の違いは?

MAモデルは自己相関関数(ACF)がラグ \(q\) でカットオフし、偏自己相関(PACF)が徐々に減衰する。ARモデルはその逆で、ACFが徐々に減衰しPACFがラグ \(p\) でカットオフする。コレログラムのカットオフが明確ならMAを疑うのが基本。

Q. 解の公式で2根が実数になることはどう確認しますか?

判別式 \(D = 1 + 4/a\) の符号を見る。\(a > 0\) なら \(D > 1 > 0\) が常に成り立つため、2根は常に実数。複素根が生じる可能性は \(a > 0\) の範囲では存在しない。

 

 

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