この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: 非復元抽出・ベルヌーイ型指示変数・標本平均の分散(有限母集団修正)
- 前提知識: 期待値の線形性 / 分散と共分散の定義 / \(X_i^2 = X_i\)(0-1変数の性質)/ 非復元抽出の確率計算
問題の概要
関東出身5人・それ以外5人の計10人から非復元抽出で5人を選ぶ。各人が関東出身かを示す0-1変数 \(X_i\) を定義し、[1] \(E[X_i^2]\)、[2] \(E[X_i X_j]\)(\(i \neq j\))、[3] 標本平均 \(\bar{X}\) の分散 \(V[\bar{X}]\) を求める3小問構成。
解説
解法の方針:[1] \(X_i\) が0-1値のみをとることから \(X_i^2 = X_i\) が成り立つため、期待値をそのまま計算する。[2] \(X_i X_j = 1\) となる条件を非復元抽出の積の確率として求める。[3] 和の分散の展開公式に[1][2]の結果を代入し、\(\frac{1}{25}\) 倍で標本平均の分散を得る。
[1]
\(X_i\) は 0 または 1 の値しか取らないため、\(X_i^2 = X_i\) が常に成り立つ(\(1^2=1, 0^2=0\) であるため)。
よって、期待値の線形性より以下のようになる。
\[E[X_i^2] = E[X_i]\]
期待値の定義(値 \(\times\) 確率の総和)より、
\[E[X_i] = 1 \cdot P(X_i = 1) + 0 \cdot P(X_i = 0) = 1 \cdot \frac{1}{2} + 0 \cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{2}\]
[2]
\(X_i X_j\) が 1 になるのは、「\(i\) 番目も \(j\) 番目も関東出身」のときのみであり、それ以外は 0 となる。
つまり、\(E[X_i X_j] = P(X_i = 1 \cap X_j = 1)\) を求めればよい。
非復元抽出において、2人がともに関東出身である確率は以下のように計算できる。
- まず \(i\) 番目が関東出身である確率:\(\frac{5}{10}\)
- その条件下で、\(j\) 番目が関東出身である確率:残り9人のうち関東出身は4人なので \(\frac{4}{9}\)
\[E[X_i X_j] = \frac{5}{10} \times \frac{4}{9} = \frac{20}{90} = \frac{2}{9}\]
[3]
標本平均の分散は、以下の公式から展開できる。
\[V[\bar{X}] = V\left[ \frac{1}{5} \sum_{i=1}^5 X_i \right] = \frac{1}{25} V\left[ \sum_{i=1}^5 X_i \right]\]
和の分散の公式 \(V[\sum X_i] = \sum V[X_i] + \sum_{i \neq j} \text{Cov}(X_i, X_j)\) を利用する。
1. 各変数の分散
\[V[X_i] = E[X_i^2] – (E[X_i])^2 = \frac{1}{2} – \left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}\]
2. 共分散
\[\text{Cov}(X_i, X_j) = E[X_i X_j] – E[X_i]E[X_j] = \frac{2}{9} – \left(\frac{1}{2} \times \frac{1}{2}\right) = \frac{2}{9} – \frac{1}{4} = \frac{8 – 9}{36} = -\frac{1}{36}\]
3. \(V[\bar{X}]\) の計算
標本サイズ \(n=5\) なので、分散の項は 5 個、共分散の項は \(5 \times 4 = 20\) 個ある。
\[V\left[ \sum_{i=1}^5 X_i \right] = 5 \cdot V[X_i] + 20 \cdot \text{Cov}(X_i, X_j) = 5\left(\frac{1}{4}\right) + 20\left(-\frac{1}{36}\right) = \frac{5}{4} – \frac{5}{9} = \frac{45 – 20}{36} = \frac{25}{36}\]
これを最初に置いた \(\frac{1}{25}\) 倍の式に代入する。
\[V[\bar{X}] = \frac{1}{25} \times \frac{25}{36} = \frac{1}{36}\]
よくある質問
Q. なぜ \(X_i^2 = X_i\) が成り立つのですか?
\(X_i\) は0か1しか取らないため、\(0^2 = 0\)、\(1^2 = 1\) となり、二乗しても値が変わらない。この性質はベルヌーイ型の0-1変数(指示変数)全般に共通する。分散の計算で \(E[X_i^2]\) が \(E[X_i]\) に置き換えられるため、計算が大幅に楽になる。
Q. 非復元抽出なのに独立として計算してはいけないのですか?
非復元抽出では引いた球を戻さないため、\(X_i\) と \(X_j\) は独立でなく負の相関を持つ。今回の共分散が \(-\frac{1}{36}\) と負になっているのはその証拠。復元抽出なら共分散はゼロになる。非復元抽出を独立と仮定すると分散が過大評価されるので注意が必要。
Q. 共分散の項の個数が20個になる理由は?
\(n=5\) 個の変数の組み合わせ \((i, j)\)(\(i \neq j\))は、順序を考慮すると \(5 \times 4 = 20\) 通り。\(\text{Cov}(X_i, X_j) = \text{Cov}(X_j, X_i)\) が成り立つため、\(\binom{5}{2} = 10\) 通りの組みに2を掛けた値と等しい。和の分散の展開では順序付きの20通りを数える。



コメント