この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: ウィルコクソンの順位和検定(Wilcoxon rank-sum test)・無作為化検定
- 前提知識: 順位の付け方とタイの処理 / 組み合わせ数の計算 \({}_{n}\mathrm{C}_{k}\) / P値の定義(帰無仮説のもとで観測値以上に極端な結果が得られる確率)
問題の概要
A薬群3人・B薬群3人の血圧データを用いたノンパラメトリック検定の問題。[1] 全データをまとめて順位をつけ、A薬群の順位和を求める。[2] 帰無仮説のもとで「A薬群の順位和が観測値以下」となる確率(片側P値)を計算する。[3] 片側P値が3%未満になり得る最小の総被験者数を選択肢から求める。
解説
解法の方針:[1] 2群のデータを混合して昇順に順位をつけ、A薬群に割り当てられた順位を合計する。[2] 全組み合わせ \({}_{6}\mathrm{C}_{3} = 20\) 通りのうち順位和が観測値以下になるケースを列挙し、その比率をP値とする。[3] 各選択肢の総人数について最小P値 \(1/{}_{n}\mathrm{C}_{n_A}\) を計算し、初めて3%未満になる人数を特定する。
[1]
まず、A薬群とB薬群のすべてのデータをまとめ、値が小さい順(血圧が低い順)に順位をつける。
提供されたデータは以下の通りである。
- A薬:135, 127, 131
- B薬:132, 144, 138
これらを小さい順に並べ替えると、次のようになる。
- 127 (A薬)
- 131 (A薬)
- 132 (B薬)
- 135 (A薬)
- 138 (B薬)
- 144 (B薬)
次に、それぞれの群に属するデータの順位を合計し、順位和を求める。
- A薬群の順位和:\(1 + 2 + 4 = 7\)
- B薬群の順位和:\(3 + 5 + 6 = 14\)
従って、正解は ③ となる。
[2]
まず、6人中3人がA薬群に割り振られるすべての組み合わせの数を求める。これは6個のものから3個を選ぶ組み合わせなので、以下の計算式となる。
\[{}_{6}\mathrm{C}_{3} = \frac{6 \times 5 \times 4}{3 \times 2 \times 1} = 20 \text{ 通り}\]
次に、A薬群の順位和が「7以下」になる組み合わせをすべて書き出す。A薬群は3人なので、3つの順位の和を考える。
- 順位和が最も小さくなるのは、順位1, 2, 3を独占した場合:\(1 + 2 + 3 = 6\) (1通り)
- 次に小さくなるのは、今回観察されたケース:\(1 + 2 + 4 = 7\) (1通り)
つまり、A薬群の順位和が 7 以下になるのは、(1, 2, 3)と(1, 2, 4)の合計 2 通り のみである。
帰無仮説が正しい場合、20 通りの組み合わせはすべて等しい確率で起こると考えられるため、順位和が 7 以下となる確率は以下のようになる。
\[\frac{2}{20} = \frac{1}{10} = 0.10\]
従って、正解は ② となる。
[3]
片側P値が最小になるのは、A薬群の全員が、B薬群の誰よりも血圧が低かった(順位が小さかった)場合である。このとき、A薬群の順位和は最小となり、その組み合わせは全体の中で1通りのみとなる。
従って、全体の人数を \(n\) 人、A薬群の人数を \(n_{A}\) 人とすると、最小のP値は \(\frac{1}{{}_{n}\mathrm{C}_{n_{A}}}\) で計算できる。
この最小のP値が 3 %( 0.03 )未満になり得るかどうかを、人数の少ない選択肢から順に検証していく。
- ⑤ 4人 (A群2人, B群2人) の場合
組み合わせは \({}_{4}\mathrm{C}_{2} = 6\) 通り。最小P値は \(\frac{1}{6} \approx 0.167\) (16.7%) となり、3%未満にはならない。 - ④ 5人 (A群2人, B群3人) の場合
組み合わせは \({}_{5}\mathrm{C}_{2} = 10\) 通り。最小P値は \(\frac{1}{10} = 0.10\) (10%) となり、3%未満にはならない。 - ③ 6人 (A群3人, B群3人) の場合
小問[2]で計算した通り、組み合わせは \({}_{6}\mathrm{C}_{3} = 20\) 通り。最小P値は \(\frac{1}{20} = 0.05\) (5%) となり、3%未満にはならない。 - ② 7人 (A群3人, B群4人) の場合
組み合わせは \({}_{7}\mathrm{C}_{3} = \frac{7 \times 6 \times 5}{3 \times 2 \times 1} = 35\) 通り。最小P値は \(\frac{1}{35} \approx 0.0285\) (約2.85%) となり、ここで初めて3%未満となる。
従って、正解は ② となる。
よくある質問
Q. 順位和検定でなぜ「すべての組み合わせが等確率」と仮定できるのですか?
帰無仮説は「2群の母分布に差がない」であり、このとき6人の被験者をどのグループに割り当てても同じ結果になる。したがって \({}_{6}\mathrm{C}_{3} = 20\) 通りの割り当てはすべて等しい確率 \(1/20\) で起こると見なせる。これが無作為化検定(permutation test)の基本的な考え方である。
Q. P値を求めるとき「観測値以下」と「観測値未満」のどちらを使うのですか?
検定の定式化によるが、この問題では「A薬群の順位和が観測値(7)以下」という片側の確率を求める。順位和が小さいほどA薬の効果が強いことを示すため、「観測値以下」の確率が片側P値となる。タイの扱いが必要な場合は問題文の指示に従う。
Q. [3] で「A群人数が固定」と仮定してよいのはなぜですか?
問題の設定では各群の人数比(A群とB群の比)が固定されており、総人数だけが変化する。選択肢の各人数に対してA群人数を問題の比率に合わせて決め、\({}_{n}\mathrm{C}_{n_A}\) を計算すれば最小P値が得られる。実際の試験でも選択肢の人数比は問題文で与えられているので、それに従って計算する。



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