統計学

【統計検定準1級】2018年6月 選択問題及び部分記述問題 問6【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 偏差値の計算・混合正規分布のグラフ・正規分布を使った合格率の計算
  • 前提知識: 偏差値の定義式(平均50・標準偏差10で標準化)/ 正規分布の標準化と \(Z\) スコア / 混合分布(2集団を重みづきで合成した分布)/ 正規分布の経験則(平均 ±1σ に約68%)

 

 

問題の概要

文系・理系の2集団が同一試験を受けた状況を設定した3小問からなる。[1] 各集団の平均・標準偏差をもとに文系Aさん・理系Bさんの偏差値を計算し、大小を比較する。[2] 文系2/3・理系1/3の混合正規分布を表すグラフを選択する。[3] 60点以上を合格としたときの受講生全体の合格率を求める。

 

 

解説

解法の方針:[1] 偏差値の公式 \(50 + 10 \times \frac{\text{得点} – \text{平均}}{\text{標準偏差}}\) に各集団の値を代入して比較する。[2] 山の幅(標準偏差)と高さ(重み÷標準偏差)の2点でグラフを絞り込む。[3] 各集団の合格率を正規分布の標準化で求め、人数比で加重平均をとる。

[1]

偏差値は、得点が平均からどれだけ離れているかを標準偏差を基準にして表した指標であり、以下の式で計算できる。

\[\text{偏差値} = 50 + 10 \times \frac{\text{得点} – \text{平均}}{\text{標準偏差}}\]

文系のAさん(得点 64 点)の偏差値

文系の集団(平均 65、標準偏差 5)における偏差値を計算する。

\[\text{Aの偏差値} = 50 + 10 \times \frac{64 – 65}{5} = 50 + 10 \times (-0.2) = 50 – 2 = 48.0\]

理系のBさん(得点 86 点)の偏差値

理系の集団(平均 80、標準偏差 3)における偏差値を計算する。

\[\text{Bの偏差値} = 50 + 10 \times \frac{86 – 80}{3} = 50 + 10 \times \frac{6}{3} = 50 + 10 \times 2 = 70.0\]

従って、正解は ③ である。

[2]

グラフを選ぶ際は、「山の位置(平均)」「山の幅(分散)」「山の高さ」の3点を確認します。

1. 山の幅(分散・標準偏差)

ここが一番のポイントであり、私が前回見落としていた部分です。

  • 文系(左の山):標準偏差 5 (分散 25)
  • 理系(右の山):標準偏差 3 (分散 9)

標準偏差(分散)が大きいほど、データの散らばりが大きいためグラフの山は「なだらかで幅が広く」なります。

つまり、左の山(文系)の方が、右の山(理系)よりも幅が広いグラフを選ぶ必要があります。

2. 山の高さ(混合ウェイトと分散のバランス)

山の高さは、「人数の割合(重み)」と「標準偏差」の組み合わせで決まります(割合が大きいほど高く、標準偏差が大きいほど低くなります)。

  • 文系(左)の高さの目安:割合 \(\frac{2}{3}\)、標準偏差 5 より \(\to \frac{2/3}{5} = \frac{2}{15} \approx 0.133\)
  • 理系(右)の高さの目安:割合 \(\frac{1}{3}\)、標準偏差 3 より \(\to \frac{1/3}{3} = \frac{1}{9} \approx 0.111\)

計算の結果、\(0.133 > 0.111\) となり、「左の山の方が少しだけ高い」ことがわかります。

この2つの条件を完璧に満たしているため、正解は ② である。

[3]

60点以上を合格としたときの、受講生全体の合格率を求める。

文系と理系、それぞれの集団における合格率を計算し、人数比で加重平均をとる。

文系の合格率

平均 65、標準偏差 5 の正規分布において、60 点以上となる確率を求める。まず、60 点を標準化する。

\[Z = \frac{60 – 65}{5} = -1.0\]

標準正規分布において、\(Z \ge -1.0\) となる確率を求める。正規分布の性質(経験則)から、平均 \(\pm 1\) 標準偏差の範囲には全体の約 68 %が含まれるため、平均以上の 50 %に半分の 34 %を足したものが該当する確率となる。

よって、文系の合格率は約 84 % である。

理系の合格率

平均 80、標準偏差 3 の正規分布において、60 点以上となる確率を求める。

\[Z = \frac{60 – 80}{3} \approx -6.67\]

\(Z = -6.67\) という値は平均から極めて遠く離れているため、60 点以上となる確率はほぼ 100 % とみなせる。

全体の合格率

文系の割合 \(\frac{2}{3}\) と理系の割合 \(\frac{1}{3}\) を使って、全体の合格率を計算する。

\[\text{全体の合格率} \approx 0.84 \times \frac{2}{3} + 1.0 \times \frac{1}{3} = 0.56 + 0.333\dots \approx 0.893\]

つまり、全体の合格率は約 89.3 %となる。

選択肢の中で最も近い値は 90 %であるため、正解は ④ である。

 

 

よくある質問

Q. 偏差値の計算で「どちらの集団の平均・標準偏差を使うか」が混乱します。

偏差値は必ず「その人が属する集団」の平均と標準偏差を使う。文系Aさんなら文系集団の値(平均65・標準偏差5)、理系Bさんなら理系集団の値(平均80・標準偏差3)を使う。異なる集団間の得点を比べるためのツールなので、集団を混在させると意味がなくなる。

Q. 混合分布のグラフで「山の高さ」はどう判断すればよいですか?

正規分布の山の頂点の高さは \(\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\) に比例する。混合分布では各成分に重み(人数割合)も掛かるため、頂点の高さは「重み ÷ 標準偏差」で比較できる。文系は \(\frac{2/3}{5} \approx 0.133\)、理系は \(\frac{1/3}{3} \approx 0.111\) なので文系の山がわずかに高い。

Q. 合格率の計算で正規分布表なしに84%と判断できますか?

「平均 ±1σ に約68%」という経験則を使えば表なしで推定できる。\(Z = -1.0\) は平均より1σ低い点なので、そこから上(合格側)は \(50\% + 34\% = 84\%\) となる。準1級では経験則(±1σ:68%、±2σ:95%、±3σ:99.7%)を暗記しておくと計算が速い。

 

 

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