統計学

【統計検定準1級】2018年6月 選択問題及び部分記述問題 問11【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 因子分析・バリマックス回転(共通性の計算・回転の目的・因子得点散布図の読み取り)
  • 前提知識: 因子負荷量と共通性の定義 / 直交回転と斜交回転の違い / 因子得点散布図の解釈

 

 

問題の概要

3つの小問からなる。[1] 因子負荷量の表が与えられ、特定の項目の第2因子負荷量を共通性から逆算する。[2] バリマックス回転の目的として正しい記述を選ぶ。[3] 因子得点の散布図からブランドの特性に関する記述のうち適切でないものを選ぶ。

 

 

解説

解法の方針:[1] 直交回転では共通性が \(h^2 = a_1^2 + a_2^2\) で表されることを使い、既知の共通性と第1因子負荷量から第2因子負荷量を逆算する。[2] バリマックス回転の定義(因子負荷量の2乗の分散の和を最大化)と単純構造の意味を確認する。[3] 散布図の横軸・縦軸が示す因子の意味を読み取り、各ブランドの位置と選択肢の記述を照合する。

[1]

バリマックス回転のような直交回転を用いた場合、各項目(変数)の「共通性」は、各因子の「因子負荷量の2乗和」となる。

公式の解説に倣い、表の共通性の値を小数第2位で丸めて(\(0.9412 \to 0.94\)、\(0.8762 \to 0.88\))計算する。

第1因子と第2因子の因子負荷量をそれぞれ \(a_1\)、\(a_2\) とすると、共通性 \(h^2\) は以下の式で表される。

\[h^2 = a_1^2 + a_2^2\]

「高級感」の共通性は 0.94、第1因子負荷量は 0.96 であるため、

\[\pm\sqrt{0.94 – 0.96^2} = \pm\sqrt{0.94 – 0.9216} = \pm\sqrt{0.0184} \approx \pm0.135\]

「親しみ」の共通性は 0.88、第1因子負荷量は -0.71 であるため、

\[\pm\sqrt{0.88 – (-0.71)^2} = \pm\sqrt{0.88 – 0.5041} = \pm\sqrt{0.3759} \approx \pm0.613\]

従って、正解は ① である。

[2]

バリマックス回転は、各因子の因子負荷量の「2乗の分散の和」を最大にするような直交回転の手法である。

この操作を行うことで、各因子において「因子負荷量の絶対値が 1 に近づく(影響が強い)項目」と「0 に近づく(影響がほとんどない)項目」が明確に分かれる傾向になる。これを単純構造と呼び、因子の意味を解釈しやすくするのが最大の目的である。

従って、正解は ④ である。

[3]

横軸(第1因子)が「洗練度」、縦軸(第2因子)が「普及率(普及度)」を表す。値が正に大きいほどその特性が強い。

「適切でないもの」を選ぶ問題であるため、各選択肢を検証する。

  • ① AはB, C, D, Eに比べて洗練度、普及率ともに高い。
    • Aは第1象限の右上にあり、他のどのブランドよりも右(洗練度大)、上(普及率大)にあるため適切である。
  • ② Cは相対的に洗練度の高くないブランドであるが、普及率も高い方ではない。
    • プロットを見ると、Cの洗練度(横軸)は約 0.6 であり、A(約 1.2)に次いで全体で2番目か3番目に高い位置にある。
    • したがって、「洗練度の高くないブランド」という記述は明確に誤りであり、この選択肢が不適切(=正解)となる。
  • ③ FはB, C, D, Eと比べると洗練度は相対的に低いが、普及率は高い。
    • Fは左上にある。洗練度(横軸)は負でB, C, D, Eより低いが、普及率(縦軸)は正で高いため適切である。
  • ④ Hは普及率の点で相対的に他のブランドに劣るが、I, Gに比べると洗練度は低いと言える。
    • Hの普及率(縦軸)は約 -1.2 で最も低い。また、洗練度(横軸)は約 -1.3 であり、I(約 -0.6)や G(約 -0.5)と比べてもさらに左にあるため「洗練度は低い」と言える。事実と合致しているため適切な記述である。
  • ⑤ Jは洗練度は高くないが、普及率は他のブランドに比べて高い。
    • Jの洗練度は 0.0 付近で平均的だが、普及率は約 1.4 で最も高いため適切である。

従って、適切でないものは ② である。

 

 

よくある質問

Q. 共通性とは何ですか?固有値との違いは?

共通性は「各変数が全因子によってどれだけ説明されるか」を表す指標で、直交回転の場合は各因子への因子負荷量の2乗和 \(h^2 = a_1^2 + a_2^2 + \cdots\) で計算する。一方、固有値は「各因子が全変数をどれだけ説明するか」を表し、その因子への全変数の因子負荷量の2乗和で計算する。向きが逆と覚えるとよい。

Q. バリマックス回転と他の直交回転(クォーティマックスなど)の違いは?

バリマックス回転は「各因子の因子負荷量の2乗の分散」を最大化する。これにより因子ごとの単純構造が得られやすい。クォーティマックス回転は「各変数の因子負荷量の2乗の分散」を最大化するため、変数側の単純化を優先する。実務ではバリマックスが最もよく使われる。

Q. 因子得点の散布図を読むとき、象限の意味をどう覚えればよいですか?

横軸・縦軸それぞれの因子名(ここでは「洗練度」「普及率」)の正の方向を確認してから読む。右上は両因子が高い、左下は両因子が低いという基本を押さえた上で、各ブランドの位置を選択肢の記述と照合する。「高い・低い」の比較対象(全体か特定ブランドか)にも注意する。

 

 

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