統計学

【統計検定準1級】2018年6月 選択問題及び部分記述問題 問12【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 時系列データの自己相関関数(ACF)・コレログラム / STL分解(季節・トレンド・不規則成分)
  • 前提知識: 自己相関係数とコレログラムの読み方 / 季節調整と時系列分解の考え方 / ホワイトノイズの定義

 

 

問題の概要

月次の現金給与総額時系列データを題材にした2問構成。[1] 原系列のプロットから季節周期を読み取り、自己相関関数(コレログラム)がどのパターンになるかを選ぶ。[2] STL分解によって得られた原系列・季節成分・トレンド成分・不規則成分の4段組グラフを読み取り、正しくない解釈を選ぶ。

 

 

解説

解法の方針:[1] 原系列プロットから周期を確認し、ACFは同じ周期のラグで強い正の相関が現れることを利用して選択肢を絞る。[2] 各成分グラフの縦軸スケールと形状を丁寧に読み取り、各選択肢の記述と照合する。

[1]

図1の原系列(現金給与総額の時系列プロット)を見ると、1年(12ヶ月)ごとの強い周期性が確認できる。また、夏と冬の年2回支給されるボーナスの影響により、半年(6ヶ月)ごとの周期も明確に観察される。

自己相関関数(ACF)をグラフ化したコレログラムにおいては、データが持つ周期と同じラグ(遅れ)のときに強い正の相関が現れる。このデータの場合、1年(ラグ12)と半年(ラグ6)の強い周期があるため、ラグが6の倍数(6, 12, 18…)のときのみ自己相関係数が正で有意な値を示すことになる。

従って、正解は ⑤ である。

[2]

図2は、時系列データを上から順に「原系列 (data)」「季節成分 (seasonal)」「トレンド成分 (trend)」「不規則成分 (remainder)」に分解したものである。各選択肢について、グラフから読み取れる内容を検証する。

⑤について: 不規則成分 (remainder) と季節成分 (seasonal) のグラフを見比べると、不規則成分は完全にランダムではなく、季節成分のピークの時期(ボーナス月)に合わせて下向きに大きな振れ幅(分散)を持つ傾向がある。このように、不規則成分の分散にまだ季節性の影響が残ってしまっているため、完全にランダムな変動である「ホワイトノイズ」とみなすことはできない。(この記述は誤り)

①について: トレンド成分 (trend) のグラフの動きから、直近の数ヶ月(2016年末から2017年にかけて)で右肩上がりの直線が横ばいになっており、停滞していることが読み取れる。

②について: トレンド成分の縦軸の値を確認すると、2012年時点の約280(千円)から、直近のピークでは約292(千円)に上昇している。その差は約12(千円)となり、概ね1万円程度の上昇であることがわかる。

③について: 季節成分 (seasonal) のグラフの動きから、1年の中に2回のピークが存在している。これは夏と冬の年2回のボーナスの影響を抽出したものであると解釈できる。

④について: 季節成分の縦軸の値を読むと、一番低い谷の部分が約-50、高いピークの部分が150を超えている。したがって、その差は少なくとも \(150 – (-50) = 200\)(千円)となり、20万円以上の差があることがわかる。

従って、正しい解釈と言えないものは ⑤ である。

 

 

よくある質問

Q. コレログラムで「ラグ6の倍数だけ正」というパターンはなぜ生じるのですか?

ACFは「ちょうど同じ周期ずれたデータ同士の相関」を測るため、周期と一致するラグで高くなる。ボーナスは年2回(6ヶ月周期)なので、ラグ6・12・18…でピークが現れる。ラグ3などボーナス月とずれたタイミングでは逆位相になり、正の値にはならない。

Q. STL分解の不規則成分がホワイトノイズかどうかはどう判断しますか?

ホワイトノイズは「分散が一定・自己相関がゼロ」という条件を満たす必要がある。グラフで判断するには、不規則成分の縦軸の振れ幅が時間によらず一定かどうかを確認する。今回のように特定の時期(ボーナス月)に振れ幅が拡大している場合は、分散が不均一であり、ホワイトノイズとは言えない。

Q. STL分解のトレンド成分は両端で値が欠けることがありますか?

ある。STLはローリング平滑化を内部で使うため、時系列の両端ではウィンドウが足りず推定値が得られない区間が生じる。そのため、グラフの最初期・最末期でトレンド成分が空白になることがある。試験では「グラフの端の動きが読めない」ことを前提に選択肢を吟味する必要がある。

 

 

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