統計学

【統計検定準1級】2017年6月 選択問題及び部分記述問題 問10【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 分割表の独立性検定(カイ二乗検定)・イェーツの補正・超幾何分布
  • 前提知識: 期待度数の公式(行合計 × 列合計 ÷ 全体合計)/ \(\chi^2\) 分布のパーセント点と有意水準の対応 / 超幾何分布の確率関数の構造

 

 

問題の概要

男女 80 人を対象にした就業状況の \(2 \times 2\) 分割表が与えられる。[1] (1) 独立性を仮定したときの「女性かつ就業者」の期待度数を求める。(2) イェーツ補正済みの \(\chi^2\) 統計量 2.76 を用い、各有意水準で帰無仮説を棄却できるか判定する。[2] 80 人から 30 人を無作為抽出したとき、そのうち「男性で就業者(38 人)」が \(x\) 人含まれる確率関数を選ぶ。

 

 

解説

解法の方針:[1](1) 期待度数の公式「行合計 × 列合計 ÷ 全体」を周辺度数に当てはめて計算する。[1](2) 自由度 1 の \(\chi^2\) 分布のパーセント点(2.706・3.841)と統計量 2.76 を大小比較して棄却の可否を判定する。[2] 有限母集団から非復元抽出する状況を超幾何分布の確率関数で表す。

[1]

(1)

独立性を仮定した場合、各セルの期待度数は以下の式で求められる。

\[期待度数 = \frac{(そのセルの行の合計) \times (そのセルの列の合計)}{(全体の合計)}\]

表の周辺度数(計の欄)から、以下の数値が読み取れる。

  • 女性の合計人数:39 人
  • 就業者の合計人数:68 人
  • 全体の合計人数:80 人

これを式に当てはめると、女性の就業者の期待度数は次のようになる。

\[\frac{39 \times 68}{80} = 39 \times 0.85 = 33.15\]

従って、正解は ③ 33.15 である。

 

(2)

この表は「男性/女性」と「就業者/非就業者」の \(2 \times 2\) の分割表であるため、自由度は以下のように計算される。

\[自由度 = (2 – 1) \times (2 – 1) = 1\]

問題文より、イェーツの補正をした \(\chi^2\) 統計量は 2.76 と与えられている。

ここで、自由度 1 の \(\chi^2\) 分布における主なパーセント点(上側確率)は以下の通りである。

  • 有意水準 10 %(\(\alpha = 0.10\))のパーセント点:2.706
  • 有意水準 5 %(\(\alpha = 0.05\))のパーセント点:3.841
  • 有意水準 1 %(\(\alpha = 0.01\))のパーセント点:6.635

与えられた統計量 2.76 とこれらのパーセント点を比較すると、以下の関係が成り立つ。

\[2.706 < 2.76 < 3.841\]

  • 有意水準 10 %の場合:統計量(2.76)がパーセント点(2.706)より大きいため、棄却域に入り帰無仮説は棄却される
  • 有意水準 5 %の場合:統計量(2.76)がパーセント点(3.841)より小さいため、棄却域に入らず帰無仮説は棄却されない

従って、正解は ③ である。

[2]

まず、集団を「着目する属性を持つグループ」と「それ以外のグループ」に分ける。今回は「男性の就業者」に着目している。

  • 全体の人数:80 人
  • 着目するグループ(男性で就業者)の人数:38 人
  • それ以外のグループの人数:\(80 – 38 = 42\) 人

この 80 人全体から、無作為に 30 人を選ぶ。

確率 \(P(X=x)\) は、「全体から 30 人を選ぶすべての組み合わせ」のうち、「着目するグループから \(x\) 人を選び、かつ、それ以外のグループから残りの \((30-x)\) 人を選ぶ組み合わせ」の割合となる。

  1. すべての選び方(分母)
    80 人から 30 人を選ぶ組み合わせ \(\rightarrow\) \(_{80}\mathrm{C}_{30}\) 通り
  2. 条件を満たす選び方(分子)
    • 38 人の「男性で就業者」から \(x\) 人を選ぶ \(\rightarrow\) \(_{38}\mathrm{C}_{x}\) 通り
    • 42 人の「それ以外」から \((30-x)\) 人を選ぶ \(\rightarrow\) \(_{42}\mathrm{C}_{30-x}\) 通り

これらを組み合わせると、確率関数は以下の式になる。

\[P(X=x) = \frac{_{38}\mathrm{C}_x \times _{42}\mathrm{C}_{30-x}}{_{80}\mathrm{C}_{30}}\]

従って、正解は ① である。

 

 

よくある質問

Q. イェーツの補正はなぜ必要なのですか?

\(2 \times 2\) 分割表で期待度数が小さい(目安:5 未満のセルがある)場合、通常の \(\chi^2\) 統計量は連続分布で近似しているために第一種過誤が増える。イェーツの補正は各セルの |観測度数 − 期待度数| から 0.5 を引いてから二乗することで、過剰検出を抑える補正である。

Q. 超幾何分布と二項分布の使い分けはどうすればよいですか?

復元抽出(一度選んだものを戻す)なら二項分布、非復元抽出(有限母集団から戻さずに取り出す)なら超幾何分布を使う。本問では 80 人の集団から 30 人を非復元で選ぶため、超幾何分布が適切。標本サイズが母集団に比べて十分小さければ二項分布で近似できる。

Q. 自由度 \((r-1)(c-1)\) の意味がわかりません。

\(r \times c\) 分割表では行の周辺度数・列の周辺度数が固定されると、自由に決められるセルの数が \((r-1)(c-1)\) になる。\(2 \times 2\) では 1 つのセルが決まれば残り 3 つも一意に決まるため、自由度は 1 となる。この自由度が \(\chi^2\) 分布のパーセント点の選択に直結する。

 

 

コメント