統計学

【統計検定準1級】2017年6月 選択問題及び部分記述問題 問9【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 有限母集団修正・標本平均の分散・非復元単純無作為抽出
  • 前提知識: 有限母集団からの非復元抽出における標本平均の分散の公式 \(V(\bar{X}) = \frac{N-n}{N-1} \cdot \frac{\sigma^2}{n}\) / 有限母集団修正項 \(\frac{N-n}{N-1}\) の意味 / 復元抽出と非復元抽出の違い

 

 

問題の概要

2つの小問からなる。[1] 有限母集団から非復元単純無作為抽出された標本平均の分散について、3つの記述(ア・イ・ウ)の正誤を判定し正しいものの組み合わせを選ぶ。[2] 母集団サイズ・標本サイズ・母分散の具体的な数値を用いて、有限母集団の場合と無限母集団とみなした場合の標本平均の分散をそれぞれ計算し、その大小関係を答える。

 

 

解説

解法の方針:[1] 有限母集団修正項 \(\frac{N-n}{N-1}\) に各条件を代入し、記述ごとに正誤を確かめる。[2] 与えられた数値を分散の公式に直接代入して \(V_1\)(有限)と \(V_2\)(無限)を求め、比較する。

[1]

(ア)について:誤り

有限母集団から「母集団の半分の大きさの標本」を抽出する、すなわち \(n = \frac{N}{2}\) の場合を考える。

問題文の冒頭で与えられている標本平均の分散の公式にこれを代入すると、以下のようになる。

\[V(\bar{X}) = \frac{N – \frac{N}{2}}{N – 1} \cdot \frac{1}{\frac{N}{2}} \sigma^2 = \frac{\frac{N}{2}}{N – 1} \cdot \frac{2}{N} \sigma^2 = \frac{N}{2(N – 1)} \cdot \frac{2}{N} \sigma^2 = \frac{1}{N – 1} \sigma^2\]

計算結果からわかるように、分散は \(\frac{1}{N – 1} \sigma^2\) となり、母集団の大きさ \(N\) によって値が変化する(\(N\) が大きくなれば分散は小さくなる)。よって、「母集団の大きさによらず標本平均の分散はほぼ等しくなる」という記述は誤りである。

(イ)について:正しい

「有限母集団から非復元単純無作為抽出された標本平均の分散」は、与えられている通り \(V(\bar{X}) = \frac{N – n}{N – 1} \cdot \frac{\sigma^2}{n}\) である。

一方、「母集団を無限母集団とみなした場合の標本平均の分散」は \(\frac{\sigma^2}{n}\) である。

これらを比較する際、ポイントとなるのは有限母集団修正項と呼ばれる \(\frac{N – n}{N – 1}\) の部分である。

標本の大きさ \(n\) は \(1 \le n \le N\) の範囲にあるため、\(N – n \le N – 1\) が成り立つ。

\[\frac{N – n}{N – 1} \le 1\]

\[\frac{N – n}{N – 1} \cdot \frac{\sigma^2}{n} \le \frac{\sigma^2}{n}\]

となり、有限母集団からの非復元抽出による分散は、無限母集団とみなした場合の分散よりも大きくなることはない(等しいか、より小さくなる)。よって、この記述は正しい。

(ウ)について:正しい

「復元抽出」とは、一度抽出した要素を母集団に戻してから次の抽出を行う方法である。この場合、毎回全く同じ状態(母平均 \(\mu\)、母分散 \(\sigma^2\))の母集団から抽出を行うことになり、各回の抽出は互いに独立となる。これは事実上、無限に要素が存在する母集団(無限母集団)から抽出を行うことと同義である。

有限母集団から「復元」単純無作為抽出された標本平均の分散は \(\frac{\sigma^2}{n}\) となり、母集団を無限母集団とみなした場合の分散と等しくなる。よって、この記述は正しい。

従って、正解は ④ である。

[2]

\(V_1\)(非復元単純無作為抽出の場合の分散)の計算

\[V_1 = \frac{N – n}{N – 1} \cdot \frac{\sigma^2}{n}\]

\[V_1 = \frac{7270 – 800}{7270 – 1} \cdot \frac{500}{800} \approx 0.55629\ldots\]

\(V_2\)(無限母集団とみなした場合の分散)の計算

無限母集団とみなす場合、有限母集団修正項は不要となるため、分散は \(\frac{\sigma^2}{n}\) となる。

\[V_2 = \frac{\sigma^2}{n}= \frac{500}{800} = \frac{5}{8} = 0.625\]

従って、正解は ① である。

 

 

よくある質問

Q. 有限母集団修正項はいつ無視してよいのですか?

標本サイズ \(n\) が母集団サイズ \(N\) に比べて十分小さいとき(目安: \(n/N \le 0.05\) 程度)は修正項が1に近づくため省略できる。本問の [2] のように \(n/N = 800/7270 \approx 0.11\) の場合は無視できず、修正項を適用することで \(V_1 < V_2\) の差が生じる。

Q. 非復元抽出の分散が復元抽出より小さくなる直感的な理由は?

非復元抽出では一度選んだ個体を除いて次を選ぶため、母集団の多様性を効率よくカバーできる。同じ個体が重複して選ばれないぶん、標本がより「代表的」になり、結果として標本平均のばらつきが小さくなる。

Q. (ア)の誤りを見抜くポイントは?

\(n = N/2\) を代入した結果 \(\frac{1}{N-1}\sigma^2\) は \(N\) に依存する式であり、「母集団の大きさによらず等しくなる」は成立しない。「ほぼ等しくなる」という言い回しも数式が示す通り成り立たないため誤りと判断できる。

 

 

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