統計学

【統計検定準1級】2015年6月 選択問題及び部分記述問題 問9【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 対数線形回帰モデル(log-linear model)における条件付き期待値の導出
  • 前提知識: 対数変換と指数変換の関係 / 正規分布のモーメント母関数 \(E[\exp(\epsilon)] = \exp(\sigma^2/2)\) / 線形回帰モデルの基本

 

 

問題の概要

2つの小問からなる。[1] \(\log Y = \alpha + \beta x + \epsilon\) の対数線形モデルを指数変換し、\(x\) が大きくなるにつれて \(Y\) がどのような挙動を示すかを答える。[2] 誤差項 \(\epsilon \sim N(0, \sigma^2)\) のもとで、正規分布のモーメント母関数を利用して \(Y\) の条件付き期待値 \(E[Y|x]\) を求める。

 

 

解説

解法の方針:[1] 対数モデルを両辺指数変換することで \(Y\) を指数関数の形に書き直し、\(x\) との関係を読み取る。[2] 期待値を \(\exp(\alpha+\beta x)\) と \(E[\exp(\epsilon)]\) に分離し、正規分布のモーメント母関数の公式を適用して \(E[Y|x]\) を導く。

[1]

\[\log Y=\alpha+\beta x+\epsilon\]

より、

\[Y=\exp(\alpha+\beta x+\epsilon)\]

となる。

\(x\) が大きくなるほど、 \(Y\) は指数関数的に変化することがわかる。

[2]

\(Y\) の条件付き期待値 \(E[Y|x]\) は、

\begin{eqnarray}
E[Y|x]&=&E[\exp(\alpha+\beta x+\epsilon)] \\
&=&\exp(\alpha+\beta x)×E[\exp(\epsilon)] \\
\end{eqnarray}

である。

\(\epsilon\sim N(0, \sigma^2)\) より、正規分布のモーメント母関数の式(参考)を用いて、

\[E[\exp(\epsilon)]=\exp(\sigma^2/2)\]

となる。

従って、

\[E[Y|x]=\exp(\alpha+\beta x+\sigma^2/2)\]

となる。

 

 

よくある質問

Q. 対数線形モデルと通常の線形回帰はどう違うのですか?

通常の線形回帰は \(Y = \alpha + \beta x + \epsilon\) と \(Y\) を直接モデル化するのに対し、対数線形モデルは \(\log Y\) を線形モデルで表す。これにより \(Y\) は \(x\) に対して指数関数的な関係を持つようになり、常に正の値をとることが保証されるため、売上・価格・人口など非負の量を扱う場面でよく使われる。

Q. モーメント母関数 \(E[\exp(\epsilon)] = \exp(\sigma^2/2)\) はなぜ成り立つのですか?

正規分布 \(N(0, \sigma^2)\) のモーメント母関数は \(M(t) = E[\exp(t\epsilon)] = \exp(\sigma^2 t^2/2)\) で定義される。\(t=1\) を代入すると \(E[\exp(\epsilon)] = \exp(\sigma^2/2)\) が得られる。準1級では「\(\epsilon \sim N(0,\sigma^2)\) のとき \(E[e^\epsilon]=e^{\sigma^2/2}\)」という結果をそのまま使えるようにしておくとよい。

Q. 条件付き期待値の計算で \(\exp(\alpha+\beta x)\) を外に出せる理由は?

\(\exp(\alpha+\beta x)\) は \(\epsilon\) に依存しない定数項(\(x\) を条件として固定しているため)なので、期待値の線形性から外に取り出すことができる。残った \(E[\exp(\epsilon)]\) だけモーメント母関数の公式で計算すればよい。

 

 

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