この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: 仮説検定・検出力・サンプルサイズ設計・二項分布の応用
- 前提知識: 標準正規分布による比率の検定 / 第2種の誤りと検出力 / 二項分布の余事象
問題の概要
2つの小問からなる。[1] ある比率に関する片側仮説検定で、与えられた標本サイズと観測比率から検定統計量を計算し、上側確率を特定する。次に、対立仮説の比率で検出力90%を達成するために必要なサンプルサイズを求める。[2] 二項分布を用いて、まれな事象が少なくとも1例観察される確率を計算し、95%の検出確率を確保するための症例数を対数近似で導出する。
解説
解法の方針:[1] 標準誤差を算出し検定統計量 \(Z\) を計算 → 正規分布表で上側確率を読み取る。サンプルサイズは \(Z_\alpha\)・\(Z_\beta\) を用いた比率検定用の公式に代入して求める。[2] 余事象 \(1-(1-p)^n\) で「少なくとも1例」の確率を計算し、95%以上となる \(n\) を \(\log(1-p)\approx -p\) の近似で導出する。
[1]
(1)
1. 標準誤差(SE)の算出
標本サイズ \(n = 475\)、帰無仮説における比率 \(p_0 = 0.05\) である。\(\hat{p}\) の標準偏差(標準誤差)は以下の式で求められる。
\[SE = \sqrt{\frac{p_0(1 – p_0)}{n}} = \sqrt{\frac{0.05 \times 0.95}{475}} = \sqrt{\frac{0.0475}{475}} = \sqrt{0.0001} = 0.01\]
2. 検定統計量 \(Z\) の算出
観測値 \(\hat{p} = 0.0733\) を標準化する。
\[Z = \frac{\hat{p} – p_0}{SE} = \frac{0.0733 – 0.05}{0.01} = \frac{0.0233}{0.01} = 2.33\]
3. 確率の特定
標準正規分布表において、\(Z = 2.33\) に対応する上側確率は約 0.01 である。
(2)
検出力を 90 %とするためのサンプルサイズ $n$ を求める。
1. 条件の整理
- 帰無仮説:\(p_0 = 0.05\)、対立仮説:\(p_1 = 0.1\)
- 有意水準 \(\alpha = 0.025\) (片側) \(\rightarrow Z_{\alpha} = 1.96\)
- 検出力 \(1 – \beta = 0.90\) \(\rightarrow \beta = 0.10 \rightarrow Z_{\beta} = 1.282\)
2. サンプルサイズの公式
比率の差の検定におけるサンプルサイズ \(n\) は、以下の近似式で計算できる。
\[n = \frac{(Z_{\alpha}\sqrt{p_0(1-p_0)} + Z_{\beta}\sqrt{p_1(1-p_1)})^2}{(p_1 – p_0)^2}\]
値を代入すると、
\[\sqrt{p_0(1-p_0)} = \sqrt{0.0475} \approx 0.2179\]
\[\sqrt{p_1(1-p_1)} = \sqrt{0.09} = 0.3\]
\[n = \frac{(1.96 \times 0.2179 + 1.282 \times 0.3)^2}{(0.1 – 0.05)^2} = \frac{(0.427 + 0.3846)^2}{0.0025} = \frac{0.8116^2}{0.0025} \approx \frac{0.6587}{0.0025} \approx 263.5\]
[2]
(1)
二項分布の余事象(1例も観察されない確率)を用いて計算する。
- 発現割合 \(p = 0.05\)
- 症例数 \(n = 8\)
「少なくとも1例」の確率は \(1 – (1 – p)^n\) である。
\[P = 1 – (1 – 0.05)^8 = 1 – 0.95^8\]
\(0.95^8 \approx 0.6634\)
\[P \approx 1 – 0.6634 = 0.3366\]
(2)
「95 %の確率で少なくとも1例観察される」ための \(n\) を求める。
1. 方程式の作成
\(1 – (1 – p)^n = 0.95\) より、\((1 – p)^n = 0.05\) となる。
両辺の自然対数をとる。
\[n \log(1 – p) = \log(0.05)\]
2. 近似式の利用
問題文の指示 \(\log(1 – \epsilon) \approx -\epsilon\) を用いる。ここで \(\epsilon = p = 0.001\) である。
\[n \times (-0.001) \approx \log(0.05)\]
また、\(\log(0.05) = \log(1/20) = -\log(20)\) である。\(\log(20) \approx 2.996\) (約 3)であるため、
\[-0.001n \approx -3\]
\[n \approx 3000\]
よくある質問
Q. 検定統計量の標準誤差で使う比率は \(\hat{p}\) と \(p_0\) のどちらですか?
帰無仮説が真のとき標本比率の分布を考えるため、SE の計算には帰無仮説の比率 \(p_0\) を使う。対立仮説の比率 \(p_1\) を使うのはサンプルサイズ計算の \(Z_\beta\) 側の項だけなので混同しないよう注意。
Q. サンプルサイズ公式の \(Z_\alpha\) と \(Z_\beta\) は両側・片側どちらで読みますか?
問題の設定に合わせる。片側検定なら \(Z_\alpha\) も片側の棄却域に対応する値を使う。この問題では有意水準 0.025(片側)なので \(Z_\alpha = 1.96\)、検出力 90% に対応する \(Z_\beta = 1.282\) を用いる。
Q. \(\log(1-p) \approx -p\) の近似はどんなときに使えますか?
\(p\) が十分小さいとき(目安 \(p \leq 0.1\) 程度)にテイラー展開の1次近似として成立する。この問題では \(p = 0.001\) と非常に小さいため精度よく使える。大きな \(p\) に適用すると誤差が無視できなくなる点に注意。



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