統計学

【統計検定準1級】2018年6月 選択問題及び部分記述問題 問9【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

 

 

問題の概要

年代(10〜60代)とよく利用するメディア(テレビ・インターネット等7種)のクロス集計データを題材とした3小問構成。[1] クロス集計表の全頻度を一定倍したときにカイ二乗統計量・P値・クラメールの連関係数がそれぞれどう変化するかを選ぶ。[2] 与えられたカイ二乗値と標本サイズからクラメールの連関係数を計算し、P値が有意になる理由として最も適切な選択肢を選ぶ。[3] 対応分析のバイプロット上の各点の位置から、年代とメディアの関連に関する記述の正誤を判断する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 頻度を \(a\) 倍したときの \(\chi^2\)・\(n\)・\(V\) の式をそれぞれ代入して変化を確認する。[2] クラメールの連関係数の公式に数値を代入し、有意性と効果量の乖離を標本サイズの観点から説明する。[3] バイプロットの象限・方向・原点との近さを手がかりに各選択肢の正誤を丁寧に確認する。

[1]

クロス集計表の各セルの観測度数(頻度)を \(O_{ij}\) 、期待度数を \(E_{ij}\) とする。

すべての頻度を \(a\) 倍(\(a=2, 3, \dots\))にすると、全体の標本サイズ \(n\) も \(a\) 倍になり、各セルの期待度数も \(a\) 倍となる(\(a E_{ij}\))。

カイ二乗統計量

元のカイ二乗統計量を \(\chi^2\) とすると、頻度を \(a\) 倍にした場合の新しいカイ二乗統計量 \(\chi’^2\) は以下のように計算される。

\[\chi’^2 = \sum \frac{(a O_{ij} – a E_{ij})^2}{a E_{ij}} = \sum \frac{a^2 (O_{ij} – E_{ij})^2}{a E_{ij}} = a \sum \frac{(O_{ij} – E_{ij})^2}{E_{ij}} = a \chi^2\]

つまり、カイ二乗統計量は 大きくなる(\(a\) 倍になる)。

P-値

カイ二乗検定の自由度は表の行数と列数のみで決まるため、頻度を \(a\) 倍にしても自由度は変わらない。

自由度が同じで、カイ二乗統計量の値が大きくなるということは、カイ二乗分布における右側の裾の面積(上側確率)が小さくなることを意味する。

従って、P-値は 小さくなる

クラメールの連関係数

クラメールの連関係数 \(V\) の定義式は以下の通りである。

\[V = \sqrt{\frac{\chi^2}{n \times (k – 1)}}\]

頻度を \(a\) 倍にした場合、新しいカイ二乗統計量は \(a \chi^2\) 、新しい標本サイズは \(a n\) となる。これを代入すると、

\[V’ = \sqrt{\frac{a \chi^2}{a n \times (k – 1)}} = \sqrt{\frac{\chi^2}{n \times (k – 1)}} = V\]

となり、\(a\) が約分されて元の値と等しくなる。

従って、クラメールの連関係数は 変わらない

以上より、正解は ④ である。

[2]

カイ二乗統計量は[1]で見た通り標本サイズに影響されて大きくなるため、値の大小だけでは関係の強さを判断できない。そこで、標本サイズに依存しない標準化された指標であるクラメールの連関係数を計算し、実際の関連の強さを評価する。

まずは、与えられた情報からクラメールの連関係数 \(V\) を実際に計算してみる。

  • カイ二乗統計量:\(\chi^2 = 116.52\)
  • 標本サイズ:\(n = 1500\)
  • \(k\) の値:表は6行(10代〜60代)7列(テレビ〜その他)であるため、\(k = \min(6, 7) = 6\)

これらを式に代入する。

\[V = \sqrt{\frac{116.52}{1500 \times (6 – 1)}} = \sqrt{\frac{116.52}{7500}} \approx \sqrt{0.0155} \approx 0.125\]

クラメールの連関係数は 0 から 1 の値を取り、1 に近いほど関係が強いことを示す。一般的に 0.1 程度という値は関係が弱いと解釈される。

一方で、ピアソンのカイ二乗検定(独立性の検定)のP-値は非常に小さく(1 %未満)、統計的に有意となっている。

このように「連関係数が小さい(実質的な関係は弱い)のに、P-値が小さく有意になる」という現象は、標本サイズ \(n\) が非常に大きい(今回は \(n=1500\))ため、微小な偏りであっても帰無仮説(独立である)を棄却するだけの検出力を持ってしまうことによって起こる。

従って、正解は ① である。

[3]
  • ①について:バイプロット上で「テレビ」は左上(第2象限)にあり、「10代」は左下(第3象限)、「20代」「30代」は右下(第4象限)にある。「テレビ」の特徴づけとなる第1成分(横軸)に着目すると、テレビも10代も負の方向(左側)にあるのに対し、20代30代は正の方向(右側)にある。よって10代は20・30代に比べてテレビとの関連が強いと読み取れる。実際の表を見ても、テレビの割合は10代の方が高い。(妥当)
  • ②について:「インターネット」と「20代」「30代」はともに第4象限で近接してプロットされており、強い結びつきがあることを示している。(妥当)
  • ③について:「40代」のプロットは原点のすぐ近くにある。これは、40代のメディア利用割合が全体の平均的な傾向とほぼ同じであることを意味する。全体の平均的な傾向ではテレビの利用が圧倒的に多い(合計値から明らか)。表の40代の行を確認しても、最も多く選択されているのはテレビ(186人)であり、新聞(55人)ではない。したがって、この記述は誤りである。
  • ④について:「ラジオ」と「50代」は上方向(第1〜2象限付近)で同じような方向にあるが、「書籍」は左下(第3象限)にあり逆方向である。原点からの方向ベクトルを考えると、ラジオに対しては50代の寄与が大きいが、書籍に対しては小さいと読み取れる。(妥当)
  • ⑤について:「60代」は左上(第2象限)にあり、「テレビ」「ラジオ」「新聞」も概ね左から上の領域に集まっている。一方「40代以下」は原点より右下(インターネット、その他、雑誌等の方向)に分布している。したがって、60代はこれらの伝統的メディアとの関連が比較的強いと言える。(妥当)

 

 

よくある質問

Q. 頻度を倍増させてもクラメールの連関係数が変わらないのはなぜですか?

クラメールの連関係数の公式 \(V = \sqrt{\chi^2 / (n(k-1))}\) において、頻度を \(a\) 倍すると分子の \(\chi^2\) も \(a\) 倍・分母の \(n\) も \(a\) 倍になるため、比率が変わらないからである。連関係数は「関係の強さ」を標本サイズに依存しない形で測る指標なので、この性質は直感とも一致する。

Q. P値が有意なのに連関係数が小さい場合、どう解釈すればよいですか?

「統計的有意」と「効果量が大きい(実質的に意味のある差)」は別物である。標本サイズが大きいほど検定の検出力が上がり、わずかな偏りでも有意差として検出される。連関係数のような効果量指標を合わせて報告し、実際の関係の強さを別途評価することが重要。

Q. バイプロットで「原点に近い」点はどう読み取ればよいですか?

対応分析のバイプロットにおいて、ある行カテゴリ(例:40代)が原点に近くプロットされているとき、その行プロフィール(各列カテゴリの割合)が全体の平均プロフィールに近いことを意味する。つまり「特定の列カテゴリとの強い結びつきがない、平均的なパターン」と解釈する。

 

 

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