統計学

【統計検定準1級】2016年6月 選択問題及び部分記述問題 問4【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: カイ二乗分布を用いた母分散の区間推定・F分布を用いた2標本の等分散検定
  • 前提知識: 偏差平方和とカイ二乗分布の関係 / カイ二乗分布のパーセント点の読み方 / F分布と不偏分散の比の性質

 

 

問題の概要

2つの小問からなる。[1] 標本サイズ16の正規母集団から得られた偏差平方和をもとに、母分散の95%信頼区間を求める(選択肢から選ぶ)。[2] 既製品Aと新製品Bの各16標本から得た偏差平方和を使って検定統計量と自由度(空欄ア)を求め、有意水準5%の片側検定で帰無仮説を棄却できるか(空欄イ)を判定する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 偏差平方和をカイ二乗統計量に変換し、カイ二乗分布表のパーセント点から信頼区間の不等式を解く。[2] 2標本の不偏分散の比がF分布に従うことを利用し、自由度を特定したうえでF表の棄却限界値と比較して検定の結論を出す。

[1]

1. 用いるべき分布の確認

正規分布に従う母集団から抽出された標本において、標本平均からの偏差平方和を \(T^2\)、標本サイズを \(n\)、母分散を \(\sigma^2\) とすると、統計量 \(\frac{T^2}{\sigma^2}\) は自由度 \(n-1\) のカイ二乗分布 \(\chi^2(n-1)\) に従うことが知られている。

新製品Bの標本サイズは \(n=16\)、偏差平方和は \(T_B^2 = 90\) である。

\[\frac{T_B^2}{\sigma_B^2} = \frac{90}{\sigma_B^2} \sim \chi^2(15)\]

2. 信頼区間の導出

自由度15のカイ二乗分布における上側 2.5 %点を \(\chi^2_{0.025}(15)\)、上側 97.5 %点を \(\chi^2_{0.975}(15)\) とすると、95 %信頼区間は、

\[\chi^2_{0.975}(15) \leq \frac{90}{\sigma_B^2} \leq \chi^2_{0.025}(15)\]

ここで、統計数値表(カイ二乗分布表)より、それぞれのパーセント点はおよそ以下の値となる。

  • \(\chi^2_{0.975}(15) \approx 6.262\)
  • \(\chi^2_{0.025}(15) \approx 27.488\)

これを不等式に代入する。

\[6.262 \leq \frac{90}{\sigma_B^2} \leq 27.488\]

\[\frac{1}{27.488} \leq \frac{\sigma_B^2}{90} \leq \frac{1}{6.262}\]

\[\frac{90}{27.488} \leq \sigma_B^2 \leq \frac{90}{6.262}\]

\[3.274\ldots \leq \sigma_B^2 \leq 14.372\ldots\]

従って、求める95%信頼区間は [3.27, 14.38] となり、正解は ② である。

[2]

1. 空欄(ア)について:検定統計量と自由度

既製品Aと新製品Bの母分散が等しいという帰無仮説 \(H_0: \sigma_A^2 = \sigma_B^2\) のもとで、2つの標本の不偏分散の比はF分布に従う。

標本サイズがそれぞれ \(n_A = 16, n_B = 16\) であるから、それぞれの不偏分散は \(U_A^2 = \frac{T_A^2}{15}\)、\(U_B^2 = \frac{T_B^2}{15}\) となる。

問題文で与えられている検定統計量 \(F\) は、これら不偏分散の比として定義されている。

\[F = \frac{U_A^2}{U_B^2} = \frac{\frac{T_A^2}{15}}{\frac{T_B^2}{15}} = \frac{T_A^2}{T_B^2}\]

この検定統計量 \(F\) は、帰無仮説が正しい場合、自由度 \((n_A-1, n_B-1)\)、すなわち 自由度 (15, 15) のF分布に従う。

よって、空欄(ア)には 15 が入る。

2. 空欄(イ)について:検定結果の判定

実際の測定値から計算された検定統計量は以下の通りである。

\[F = \frac{T_A^2}{T_B^2} = \frac{180}{90} = 2.0\]

次に、有意水準 5 %の片側検定を行うため、自由度 \((15, 15)\) のF分布における上側 5 %点 \(F_{0.05}(15, 15)\) を確認する。一般的なF分布表を引くと、その値は以下の通りである。

\[F_{0.05}(15, 15) \approx 2.40\]

得られた検定統計量の値 \(F = 2.0\) は、棄却限界値である 2.40 より小さい。

\[F = 2.0 < 2.40\]

これは、計算された \(F\) 値が上側 5 %の棄却域に入っていないことを意味する。

従って、帰無仮説 \(H_0\) は 棄却できない

よって、空欄(イ)には できない

以上より、正解は ① である。

 

 

よくある質問

Q. カイ二乗分布の不等式を逆転させるのはなぜですか?

信頼区間を \(\sigma_B^2\) について解く際、\(\frac{90}{\sigma_B^2}\) の分母に \(\sigma_B^2\) があるため、不等号の向きが逆になる。「大きいカイ二乗値 ≤ 90/σ² ≤ 小さいカイ二乗値」を \(\sigma_B^2\) について整理すると「90/大 ≤ σ² ≤ 90/小」となる点に注意する。

Q. F検定で「片側」か「両側」かはどう判断しますか?

問題文の対立仮説の形で判断する。「\(\sigma_A^2 > \sigma_B^2\)」のように一方向を問う場合は片側検定で上側パーセント点のみ使う。「\(\sigma_A^2 \neq \sigma_B^2\)」の場合は両側検定となり、上側・下側の両方の棄却域を考える必要がある。

Q. 自由度 (15, 15) のF分布の上側5%点はどこで確認しますか?

試験では問題冊子に添付された統計数値表(F分布表)を使う。行が分子の自由度、列が分母の自由度に対応していることが多い。自由度 (15, 15) の上側5%点は約 2.40 であり、本問ではこの値と計算した F = 2.0 を比較して棄却の可否を判定する。

 

 

コメント