統計学

【統計検定準1級】2016年6月 選択問題及び部分記述問題 問5【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 母比率の検定・棄却域の決定・検出力の計算
  • 前提知識: 標本比率の正規近似(\(\hat{p} \approx N\left(p, \frac{p(1-p)}{n}\right)\)) / 有意水準と棄却域の関係 / 検出力(第二種の過誤の補数)の定義

 

 

問題の概要

2つの小問からなる。[1] 母比率が 0.4 という帰無仮説のもとで、標本サイズ 600 の標本比率を使った片側検定の棄却域(境界値 \(c\))を有意水準 5% で求める。[2] 真の母比率が 0.45 であるとき、[1] で求めた棄却域に対応する検出力を求める。

 

 

解説

解法の方針:[1] 帰無仮説のもとで標本比率を正規近似し、上側 5% 点(1.645)を使って棄却域の境界値 \(c\) を求める。[2] 対立仮説(\(p=0.45\))のもとで標本比率を再び正規近似し、\(\hat{p} \ge c\) となる確率(検出力)を標準正規分布表から読み取る。

[1]

帰無仮説 \(H_0\) が正しいと仮定すると、母比率 \(p = 0.4\) である。

このとき、標本比率 \(\hat{p}\) の平均と分散は以下のようになる。

  • 平均:\(E(\hat{p}) = p = 0.4\)
  • 分散:\(V(\hat{p}) = \frac{p(1-p)}{n} = \frac{0.4 \times (1 – 0.4)}{600} = \frac{0.24}{600} = 0.0004\)
  • 標準偏差:\(\sigma = \sqrt{0.0004} = 0.02\)

よって、\(\hat{p}\) は近似的に正規分布 \(N(0.4, 0.02^2)\) に従う。

\(\hat{p}\) を標準化した変数 \(Z = \frac{\hat{p} – 0.4}{0.02}\) は、標準正規分布 \(N(0, 1)\) に従う。

\(P(\hat{p} \ge c) = 0.05\) より、標準化すると、

\[P\left(Z \ge \frac{c – 0.4}{0.02}\right) = 0.05\]

となる。

標準正規分布の上側 5% 点は 1.645 であるため、

\[\frac{c – 0.4}{0.02} = 1.645\]

\[c = 0.4 + 1.645 \times 0.02 = 0.4 + 0.0329 = 0.4329\]

従って、正解は ③ である。

[2]

対立仮説 \(H_1\) が真であるとすると、母比率 \(p = 0.45\) である。

このとき、標本比率 \(\hat{p}\) の平均と分散は以下のようになる。

  • 平均:\(E(\hat{p}) = 0.45\)
  • 分散:\(V(\hat{p}) = \frac{0.45 \times (1 – 0.45)}{600} = \frac{0.2475}{600} = 0.0004125\)
  • 標準偏差:\(\sigma = \sqrt{0.0004125} \approx 0.02031\)

よって、\(\hat{p}\) は近似的に正規分布 \(N(0.45, 0.02031^2)\) に従う。

検出力は、対立仮説が真であるときに \(\hat{p}\) が棄却域に入る確率 \(P(\hat{p} \ge c)\) である。

\[Z = \frac{\hat{p} – 0.45}{0.02031}\]

\[P(\hat{p} \ge 0.4329) = P\left(Z \ge \frac{0.4329 – 0.45}{0.02031}\right) = P\left(Z \ge \frac{-0.0171}{0.02031}\right) \approx P(Z \ge -0.842)\]

標準正規分布において、\(Z\) が \(-0.842\) 以上になる確率を考える。

対称性から \(P(Z \ge -0.842) = P(Z \le 0.842)\) であり、標準正規分布表より \(Z=0.84\) のときの下側確率(面積)は約 0.80 である。

従って、正解は ⑤ である。

 

 

よくある質問

Q. 棄却域の境界値を求めるとき、なぜ帰無仮説の \(p\) で分散を計算するのですか?

仮説検定は「帰無仮説が真だと仮定したときに、観測データがどれほど稀か」を評価する手続き。そのため棄却域の設定は \(H_0: p=0.4\) のもとで行い、分散も \(p=0.4\) を使って計算する。検出力の計算([2])は対立仮説の \(p=0.45\) を使う点と混同しないよう注意。

Q. 検出力と第二種の過誤(\(\beta\))の関係は?

検出力(power)は「対立仮説が真のときに正しく帰無仮説を棄却できる確率」で、\(1 – \beta\) に等しい。\(\beta\) は対立仮説が真なのに棄却しない誤り(第二種の過誤)の確率。今回は検出力 ≈ 0.80 なので、\(\beta \approx 0.20\) となる。

Q. サンプルサイズを大きくすると検出力はどう変わりますか?

\(n\) が大きいほど標準誤差 \(\sqrt{p(1-p)/n}\) が小さくなり、帰無仮説と対立仮説の分布の重なりが減る。そのため棄却域に入りやすくなり、検出力は上がる。逆に \(n\) が小さいと検出力は低下し、真の差を見逃しやすくなる(第二種の過誤が増える)。

 

 

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