この問題のテーマ・前提知識
- テーマ: 自由度調整済み決定係数(\(\bar{R}^2\))の計算 / ダービン・ワトソン統計量と自己相関の読み取り
- 前提知識: 決定係数 \(R^2\) と自由度補正の考え方 / \(DW \approx 2(1 – \hat{\rho})\) の近似式 / 正・負の自己相関が残差プロットに現れるパターン
問題の概要
2つの小問からなる。[1] サンプルサイズ21・説明変数1個・\(R^2 = 0.0372\) の重回帰モデルについて、自由度調整済み決定係数 \(\bar{R}^2\) の値として最も近いものを選ぶ。[2] ダービン・ワトソン統計量 \(DW = 2.98\) から1次の自己相関係数を推定し、それに対応する残差の時系列プロットを5択から選ぶ。
解説
解法の方針:[1] \(\bar{R}^2 = 1 – \frac{n-1}{n-k-1}(1-R^2)\) に数値を代入して計算する。[2] \(DW \approx 2(1-\hat{\rho})\) から \(\hat{\rho}\) を求め、負の自己相関に対応する残差パターン(正負が交互に振動)を選ぶ。
[1]
自由度調整済み決定係数(\(\bar{R}^2\))は、説明変数の数が多いほど決定係数(\(R^2\))が大きくなりやすいという性質を補正した指標である。以下の公式で計算できる。
\[\bar{R}^2 = 1 – \frac{n-1}{n-k-1}(1 – R^2)\]
ここで、\(n\) はサンプルサイズ、\(k\) は説明変数の数である。
\[\bar{R}^2 = 1 – \frac{21-1}{21-1-1}(1 – 0.0372)\]
\[\bar{R}^2 = 1 – \frac{20}{19}(0.9628)\]
\[\bar{R}^2 \approx 1 – 1.0526 \times 0.9628\]
\[\bar{R}^2 \approx 1 – 1.0135 = -0.0135\]
従って、正解は ① である。
[2]
1. 自己相関係数の推定
ダービン・ワトソン統計量 \(DW\) と1次の自己相関係数 \(\hat{\rho}\) の間には、近似的に以下の関係が成り立つ。
\[DW \approx 2(1 – \hat{\rho})\]
\(DW = 2.98\) より、
\[2.98 \approx 2(1 – \hat{\rho})\]
\[1.49 \approx 1 – \hat{\rho}\]
\[\hat{\rho} \approx 1 – 1.49 = -0.49\]
従って、推定値 \(\hat{\rho}\) は約 -0.50 となる。
2. 残差の出力図の選択
求めた自己相関係数 \(\hat{\rho} \approx -0.50\) は、残差に負の自己相関があることを示している。
負の自己相関がある場合、ある期の残差が正であれば次の期の残差は負になりやすく、逆に負であれば次は正になりやすいという特徴を持つ。そのため、残差を時系列で折れ線グラフにすると、ゼロをまたいで激しく上下に振動するギザギザした形になる。
各図の特徴は以下の通りである。
- 図(ア):波が緩やかで、正の値、負の値がそれぞれ連続する傾向がある。これは正の自己相関(\(\hat{\rho} > 0\))の特徴である。
- 図(イ):比較的ランダムに変動しているように見え、自己相関が弱い(\(\hat{\rho} \approx 0\))状態に近い。
- 図(ウ):隣り合う値が正負交互になりやすく、激しく上下に振動している。これが負の自己相関(\(\hat{\rho} < 0\))の典型的な特徴である。
従って、正解は ⑤ である。
よくある質問
Q. 自由度調整済み決定係数がマイナスになることはありますか?
ある。\(R^2\) が非常に小さく、かつ \(\frac{n-1}{n-k-1}\) の補正係数が1より大きいとき、\(\bar{R}^2\) は負になる。これは「説明変数を加えても説明力がほぼない」ことを意味し、モデルの当てはまりが切片のみのモデル(帰無モデル)より悪い状態を示す。
Q. DW統計量が2に近いとどういう意味ですか?
\(DW \approx 2(1-\hat{\rho})\) より、\(DW = 2\) のとき \(\hat{\rho} \approx 0\) となり、残差に自己相関がないことを意味する。\(DW\) が0に近いほど正の自己相関、4に近いほど負の自己相関が強い。本問の \(DW = 2.98\) は4に近く、負の自己相関を示している。
Q. 自己相関があると何が問題なのですか?
OLS(最小二乗法)の推定量は不偏性を保つが、最小分散性(BLUE)が失われる。さらに標準誤差の推定が不正確になるため、t検定やF検定の結果が信頼できなくなる。時系列データでは自己相関の検出と対処(GLS・HAC標準誤差など)が欠かせない。



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