統計学

【統計検定準1級】2016年6月 選択問題及び部分記述問題 問7【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: フィッシャーの3原則(反復・無作為化・局所管理)
  • 前提知識: 各原則の定義と目的の違い / 系統誤差と偶然誤差の区別 / ブロック計画の考え方

 

 

問題の概要

肥料の効果を比較する農業実験を題材に、フィッシャーの3原則(反復・無作為化・局所管理)に関する5つの記述のうち、正しいものを1つ選ぶ問題。各原則の目的と正しい適用方法を正確に理解しているかが問われる。

 

 

解説

解法の方針:フィッシャーの3原則それぞれの定義・目的を確認し、各選択肢が原則を正しく説明しているか・目的を正しく述べているかを1つずつ照合する。混同しやすい「無作為化」と「局所管理」の違いに特に注意する。

フィッシャーの3原則
  1. 反復(Replication) 同じ処理(今回であれば同じ肥料)を、複数の異なる実験対象(苗)に対して行うこと。これにより、偶然生じるばらつき(偶然誤差)の大きさを評価・推定できるようになり、実験の精度が高まる。
  2. 無作為化 / ランダム化(Randomization) 実験対象に対する処理の割り付けを、くじ引きなどでランダム(無作為)に決定すること。これにより、実験者が制御できない未知の要因による偏り(系統誤差)を、偶然のばらつき(偶然誤差)へと転化させることができる。
  3. 局所管理(Local Control) 実験を行う環境全体が均一でない場合、全体をできるだけ均質な複数のブロック(局所)に分割し、それぞれのブロック内で処理の比較を行うこと。これにより、場所や時間などの既知の環境要因による影響(系統誤差)を実験結果から分離・排除し、純粋な処理の効果を見えやすくする。
  • ① 誤り(反復の誤解) 「同じ苗に肥料Aを与えた後、肥料Bを与える」というのは正しい反復ではない。この方法では、先に与えた肥料Aの影響が後まで残ってしまう可能性(持ち越し効果)があり、肥料Bの純粋な効果を測定できなくなる。正しい反復とは、「別の複数の苗に、それぞれ同じ肥料を与えること」である。
  • ② 誤り(交絡の発生) 大きい苗のグループに肥料Aのみ、小さい苗のグループに肥料Bのみを与えてしまうと、最終的な成長の差が「肥料の違い」によるものなのか、「元々の苗の大きさ」によるものなのかが区別できなくなってしまう。これを「交絡(こうらく)」と呼ぶ。局所管理を行うのであれば、大きい苗のグループ内、小さい苗のグループ内のそれぞれで、肥料Aと肥料Bをランダムに割り付けるべきである。
  • ③ 正しい(局所管理の適切な例) 水はけや日当たりといった環境の違い(系統誤差)による影響を小さくするために、畑をある程度均質な条件を持つ複数の区画(ブロック)に分割することは、まさに「局所管理」の典型的な手法である。
  • ④ 誤り(局所管理の目的の誤り) 水はけのよさで畑を分割すること自体は局所管理の手法として正しいが、その目的が誤っている。局所管理の目的は、水はけによる系統誤差を「比較する」ことではなく、その影響を実験データから「分離(排除)する」ことによって、純粋な肥料の効果を精度良く比較することである。
  • ⑤ 誤り(無作為化との混同) 「系統誤差を偶然誤差にする(転化させる)」のは無作為化の役割である。局所管理の役割は、既知の系統誤差をブロック間の差として分離し、実験の誤差を小さくすることである。両者の原則を混同しているため誤りである。

以上より、正解は ③ である。

 

 

よくある質問

Q. 無作為化と局所管理は何が違うのですか?

無作為化は「未知の要因による偏り(系統誤差)を偶然誤差に転化する」ことが目的で、処理の割り付けをランダムにする操作。局所管理は「既知の環境要因(水はけ・日当たりなど)の影響をブロック間の差として分離・排除する」ことが目的で、実験場をブロックに分ける操作。「偶然誤差に転化する」のは無作為化だけである。

Q. 交絡とは何ですか?この問題でどこに現れていますか?

交絡とは、着目する要因(肥料の種類)の効果と別の要因(苗の大きさ)の効果が混じり合い、分離できなくなる現象。選択肢②では大きい苗と小さい苗にそれぞれ異なる肥料だけを与えているため、成長差の原因が「肥料」か「苗の大きさ」かを区別できない。ブロック内でランダムに割り付けることで交絡を防ぐ。

Q. 反復はなぜ「同じ苗に複数回」ではいけないのですか?

同じ実験対象に連続して異なる処理を施すと、前の処理の影響が残る「持ち越し効果(キャリーオーバー効果)」が生じる。これでは後の処理の純粋な効果を測定できない。反復は必ず「独立した複数の実験対象に同じ処理を施す」形で行う必要がある。

 

 

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