統計学

【統計検定準1級】2016年6月 選択問題及び部分記述問題 問8【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 指数分布の確率密度関数・平均・中央値・モーメント推定
  • 前提知識: 生存関数と累積分布関数の関係 / 部分積分法 / モーメント法(標本平均によるパラメータ推定)

 

 

問題の概要

機械の寿命 \(T\) の生存関数が \(S(t) = \exp(-\lambda t)\)(\(t \geq 0\))で与えられる3小問。[1] 生存関数から確率密度関数を導き選択肢を選ぶ。[2] 指数分布の平均と中央値を求める。[3] 標本平均 2.0 年のデータからモーメント法で中央値を数値推定する。

 

 

解説

解法の方針:[1] 累積分布関数 \(F(t) = 1 – S(t)\) を微分して確率密度関数を求める。[2] 部分積分で平均を計算し、生存関数 \(S(m)=0.5\) から中央値を導く。[3] \(1/\lambda =\) 標本平均 の関係を使い \(\lambda\) を推定して中央値を数値計算する。

[1]

確率変数 \(T\) が \(t\) 以下となる確率を表す累積分布関数 \(F(t)\) は、全確率 1 から生存関数 \(S(t)\) を引くことで求められる。

\[F(t) = P(T \le t) = 1 – P(T > t) = 1 – S(t)\]

\[F(t) = 1 – \exp(-\lambda t)\]

確率密度関数 \(f(t)\) は、累積分布関数 \(F(t)\) を時間 \(t\) で微分することで得られる。

\[f(t) = \frac{d}{dt}F(t) = \frac{d}{dt}\left(1 – \exp(-\lambda t)\right)\]

\[f(t) = 0 – (-\lambda)\exp(-\lambda t) = \lambda \exp(-\lambda t)\]

時間は 0 以上であるため、 \(t < 0\) のときは \(f(t) = 0\) となる。

従って、正解は ④ である。

[2]

導出した確率密度関数 \(f(t) = \lambda \exp(-\lambda t)\) は、パラメータ \(\lambda\) の指数分布に従うことを示している。

平均(期待値)の計算

平均 \(E[T]\) は定義通りに積分を計算することで求められる(部分積分法を用いる)。

\[E[T] = \int_{0}^{\infty} t f(t) dt = \int_{0}^{\infty} t \lambda \exp(-\lambda t) dt\]

\[E[T] = \left[ t \left( -\exp(-\lambda t) \right) \right]_{0}^{\infty} – \int_{0}^{\infty} 1 \cdot \left( -\exp(-\lambda t) \right) dt\]

第 1 項は \(t \to \infty\) のとき 0 に収束し、\(t=0\) のときも 0 になる。よって第 2 項のみを計算する。

\[E[T] = \left[ -\frac{1}{\lambda} \exp(-\lambda t) \right]_{0}^{\infty} = 0 – \left( -\frac{1}{\lambda} \right) = \frac{1}{\lambda}\]

中央値の計算

中央値 \(m\) は、累積分布関数 \(F(m) = 0.5\)、または生存関数 \(S(m) = 0.5\) となるような \(m\) の値である。

\[S(m) = \exp(-\lambda m) = \frac{1}{2}\]

両辺の自然対数($\log$)をとる。

\[-\lambda m = \log\left(\frac{1}{2}\right)\]

ここで、\(\log(1/2) = \log(2^{-1}) = -\log 2\) であるため、

\[-\lambda m = -\log 2\]

\[m = \frac{\log 2}{\lambda}\]

従って、正解は ⑤ である。

[3]

標本から得られたデータの平均(標本平均)を用いて、未知のパラメータを推定する(モーメント法)。

標本平均は 2.0 年である。

\[\text{平均} = \frac{1}{\lambda} = 2.0\]

\[\text{中央値} = \frac{\log 2}{\lambda} = (\log 2) \times \left(\frac{1}{\lambda}\right)\]

\[\text{中央値} \approx 0.7 \times 2.0 = 1.4 \text{ (年)}\]

従って、正解は ② である。

 

 

よくある質問

Q. 生存関数から確率密度関数を導く手順がわかりません。

\(F(t) = 1 – S(t)\) の関係を使い、両辺を \(t\) で微分するだけでよい。\(S(t) = \exp(-\lambda t)\) を微分すると \(-(-\lambda)\exp(-\lambda t) = \lambda\exp(-\lambda t)\) が得られる。符号のミスに注意すること。

Q. 指数分布の平均と中央値はなぜ一致しないのですか?

指数分布は右裾が長い非対称な分布であるため、平均は大きな値に引っ張られて中央値より大きくなる。平均は \(1/\lambda\)、中央値は \((\log 2)/\lambda \approx 0.693/\lambda\) であり、常に「中央値 < 平均」が成り立つ。

Q. モーメント法とはどういう考え方ですか?

理論上の平均(母平均)を標本平均で置き換えてパラメータを推定する方法。指数分布では母平均 \(= 1/\lambda\) なので、標本平均 \(\bar{T}\) を観測したとき \(\hat{\lambda} = 1/\bar{T}\) と推定する。最尤推定量と一致するため、指数分布では特に使いやすい。

 

 

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