統計学

【統計検定準1級】2016年6月 選択問題及び部分記述問題 問9【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

  • テーマ: 二元配置分散分析・プーリング(交互作用の残差への統合)
  • 前提知識: 二元配置分散分析の分散分析表(平方和・自由度・平均平方・\(F\)値)の構造 / 交互作用とは何か / プーリングの定義と操作手順

 

 

問題の概要

触媒の種類(3水準)と温度(3水準)を因子とする二元配置実験の分散分析表が与えられる。[1] 交互作用が有意でないとみなしてプーリングを行ったとき、分散分析表の各項目(平方和・自由度・平均平方・\(F\)値)がどのように変化するかを選択肢から選ぶ。[2] プーリング後の分析結果をもとに、酸化率を最大化する最適条件と点推定値を求める。

 

 

解説

解法の方針:[1] プーリングとは交互作用の平方和・自由度を残差に足し合わせる操作であることを確認し、各項目への影響を整理する。[2] プーリング後の残差平均平方を使って主効果の \(F\) 値を再計算し、有意な主効果の水準から最適条件と点推定値を特定する。

[1]

分散分析において、交互作用が統計的に有意でないと判断された場合、その交互作用による変動は本来の「誤差」によるものとみなすことができる。

このとき、交互作用の平方和と自由度を、残差(誤差)の平方和と自由度に足し合わせる操作をプーリング(pooling)と呼ぶ。

プーリングを行うと、表2の分散分析表の各項目は以下のように変化する。

  • 主効果(触媒・温度)の平方和と自由度:これらはプーリングの操作に関与しないため、変化しない
  • 残差の平方和:元の残差の平方和に、有意でないとされた交互作用の平方和が足されるため、変化する
    • 新しい残差平方和 \(= 346.00 + 168.00 = 514.00\)
  • 残差の自由度:元の残差の自由度に、交互作用の自由度が足されるため、変化する
    • 新しい残差自由度 \(= 9 + 4 = 13\)
  • 残差の平均平方:新しい平方和を新しい自由度で割るため、変化する
    • 新しい残差平均平方 \(= \frac{514.00}{13} \approx 39.54\)
  • 主効果(触媒・温度)の \(F\) :\(F\) 値は「主効果の平均平方 \(\div\) 残差の平均平方」で計算される。
    分子(主効果の平均平方)は変わらないが、分母となる残差の平均平方が変化するため、主効果の\(F\) 値も変化する
    また、\(F\)値と残差の自由度がともに変化するため、\(P\) 値も変化する。

これらに基づくと、

  • ① \(F\) 値は変化するが、その和が元の和と等しくなるという数学的性質はない。
  • ② 残差の自由度が変化し、\(F\) 値も変化するため、\(P\) 値も当然変化する。
  • ③ 触媒と温度の \(F\) 値は変化する。
  • 触媒と温度の平方和の値は変化しないが、残差の平方和の値は変化する。これが正しい。
  • ⑤ 合計の自由度はデータ数に依存するため常に一定(17 のまま)であり、変化しない。

従って、正解は ④ である。

[2]

プーリング後の分散分析表をもとに、触媒と温度の主効果が有意であるかを判断し、最適な条件を推定する。

まず、先ほど求めた新しい残差の平均平方(約 39.54)を用いて、新しい \(F\) 値を計算する。

  • 触媒の \(F\) :\(F = \frac{24.00}{39.54} \approx 0.61\)
  • 温度の \(F\) :\(F = \frac{168.00}{39.54} \approx 4.25\)

\(F\) 値が 1 を下回っている「触媒」の主効果は、誤差よりもばらつきが小さいため、明らかに統計的に有意ではない。

一方、「温度」の \(F\) 値は 4.25 であり、一般的な有意水準(5 %など)において有意であると判断できる。

この結果から以下の結論が導かれる。

  1. 触媒の違いによる影響はない:白金、セリウム、コバルトのどれを選んでも、酸化率に統計的に意味のある差は生じない。
  2. 温度の違いによる影響はある:温度を変えると酸化率に意味のある差が生じる。

酸化率をできるだけ大きくしたい場合、表1の「平均」の行(各温度での周辺平均)に注目する。

  • \(350^\circ\mathrm{C}\) の全体平均:78.0 %
  • \(400^\circ\mathrm{C}\) の全体平均:86.0 %
  • \(450^\circ\mathrm{C}\) の全体平均:88.0 %

最も平均値が高いのは \(450^\circ\mathrm{C}\) であるため、最適温度は \(450^\circ\mathrm{C}\) となる。

次に点推定値について考える。分散分析の結果、「触媒の違いには統計的な意味がない」と結論づけたため、特定の触媒のデータだけに絞って推定するのは不適切である。

触媒による違い(主効果)や交互作用をモデルから除外したため、温度 \(450^\circ\mathrm{C}\) における全体の平均値である 88.0 % を最適条件での点推定値とするのが統計的に最も妥当である。

従って、正解は ④ である。

 

 

よくある質問

Q. プーリングしてよい条件は何ですか?

交互作用の \(F\) 値が十分小さく(\(F < 1\) や有意水準を大きく下回る場合)、有意でないと判断されたときにプーリングを行う。有意な交互作用をプーリングすると主効果の解釈が歪むため、プーリング前に交互作用の有意性を必ず確認する必要がある。

Q. プーリング後に合計の自由度は変わりますか?

変わらない。合計の自由度はデータ総数 \(N\) から 1 を引いた \(N-1\) で決まり、プーリングはその内訳(交互作用 → 残差への組み替え)に過ぎない。各要因と残差の自由度の合計は常に \(N-1\) のまま保たれる。

Q. 触媒が有意でないのに最適条件を「触媒は何でも良い」と言える理由は?

有意でないということは「触媒の違いによる変動が誤差の範囲内に収まっている」ことを意味する。したがって特定の触媒を選ぶ統計的根拠がなく、どの触媒を使っても酸化率への影響は誤差と区別できない。最適条件の推定では有意な因子(温度)の最適水準のみを指定すれば十分である。

 

 

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