統計学

【統計検定準1級】2017年6月 選択問題及び部分記述問題 問5【解答例・解説】

この問題のテーマ・前提知識

 

 

問題の概要

3つの小問からなる。兄弟の身長が相関係数 0.6 の 2 変量正規分布に従うとして、[1] 兄の身長が 150 cm のときの弟の身長の条件付き期待値、[2] 弟の身長が 115 cm 以上である確率、[3] 兄が弟より 20 cm 以上高い確率を、それぞれ求める。

 

 

解説

解法の方針:[1] 2変量正規分布の条件付き期待値の公式にそのまま数値を代入する。[2] 弟の身長の周辺分布が正規分布であることを利用し、標準化して正規分布表から確率を求める。[3] 差 \(W = X – Y\) が正規分布に従うことを使い、\(W\) の期待値・分散を求めて標準化する。

[1]

\((X, Y)\) が2変量正規分布に従うとき、\(X=x\) が与えられた場合の \(Y\) の条件付き期待値 \(E[Y|X=x]\) は、

\[E[Y|X=x] = \mu_Y + \rho \frac{\sigma_Y}{\sigma_X} (x – \mu_X)\]

である。

与えられた数値を代入すると、

\[E[Y|X=150] = 130 + 0.6 \times \frac{15}{15} \times (150 – 140)=136\]

従って、弟の身長の期待値は 136 cmとなる。

[2]

弟の身長 \(Y\) の周辺分布について考える。\((X, Y)\) が 2 変量正規分布に従うため、\(Y\) 単独でも正規分布に従う。すなわち、\(Y\) は平均 130、分散 \(15^2\) の正規分布 \(N(130, 15^2)\) に従う。

求める確率は \(P(Y \ge 115)\) である。これを計算するために、標準化を行う。
標準化変数 \(Z\) を次のように定義する。

\[Z = \frac{Y – 130}{15}\]

これにより、\(Z\) は標準正規分布 \(N(0, 1)\) に従うようになる。

\[P(Y \ge 115) = P\left(\frac{Y – 130}{15} \ge \frac{115 – 130}{15}\right)\]

\[P(Y \ge 115) = P\left(Z \ge \frac{-15}{15}\right) = P(Z \ge -1)\]

標準正規分布は \(Z=0\) を軸に左右対称であるため、\(P(Z \ge -1)\) は \(P(Z \le 1)\) と等しい。

標準正規分布表から値を読み取るか、一般的な性質(平均から \(\pm1\) 標準偏差以内に約 68 %のデータが含まれる)を利用して計算する。

\[P(Z \ge -1) = 0.5 + P(0 \le Z \le 1) \approx 0.5 + 0.3413 = 0.8413\]

従って、正解は ⑤ 0.84 である。

[3]

求める確率は \(P(X – Y \ge 20)\) である。ここで、新しい確率変数 \(W = X – Y\) を定義する。

\(X\) と \(Y\) は2変量正規分布に従うため、その線形結合である \(W\) も正規分布に従う。まず、\(W\) の期待値と分散を求める。

期待値 \(E[W]\)

\[E[W] = E[X – Y] = E[X] – E[Y] = 140 – 130 = 10\]

分散 \(V[W]\)

\[\mathrm{Cov}(X, Y) = \rho \sigma_X \sigma_Y = 0.6 \times 15 \times 15 = 135\]

\[V[W] = 15^2 + 15^2 – 2 \times 135 = 225 + 225 – 270 = 180\]

よって、\(W\) は平均 10、分散 180 の正規分布 \(N(10, 180)\) に従う。標準偏差は \(\sigma_W = \sqrt{180} \approx 13.4\) となる。

次に、\(P(W \ge 20)\) を求めるために標準化を行う。

\[Z = \frac{W – 10}{\sqrt{180}}\]

\[P(W \ge 20) = P\left(Z \ge \frac{20 – 10}{\sqrt{180}}\right) = P\left(Z \ge \frac{10}{6\sqrt{5}}\right)\]

\(\sqrt{5} \approx 2.236\) を用いて数値を計算する。

\[\frac{10}{6 \times 2.236} \approx \frac{10}{13.416} \approx 0.745\]

つまり、\(P(Z \ge 0.745)\) を求めればよい。標準正規分布表を確認すると、上側確率(\(Z \ge z\) となる確率)は、\(z=0.74\) のとき約 0.2296、\(z=0.75\) のとき約 0.2266 である。

従って、正解は ① 0.23 である。

 

 

よくある質問

Q. 条件付き期待値の公式 \(E[Y|X=x] = \mu_Y + \rho \frac{\sigma_Y}{\sigma_X}(x – \mu_X)\) はどう導くのですか?

2変量正規分布において、\(X=x\) を固定したときの \(Y\) の条件付き分布も正規分布になる。その平均が上記の公式であり、回帰直線の式と同じ形をしている。\(\rho = 0\) なら条件なしの期待値 \(\mu_Y\) と一致し、相関が強いほど \(X\) の情報が \(Y\) の予測に効く。

Q. \(W = X – Y\) の分散を求めるとき、なぜ共分散を引くのですか?

\(V[X – Y] = V[X] + V[Y] – 2\mathrm{Cov}(X, Y)\) は分散の加法公式から来る。\(X\) と \(Y\) が独立なら \(\mathrm{Cov} = 0\) で引き算不要だが、相関がある場合は共分散の分だけ変動が打ち消し合うため、その分を差し引く必要がある。

Q. [2] で \(P(Z \ge -1) = P(Z \le 1)\) と変換できるのはなぜですか?

標準正規分布は \(Z = 0\) を軸に対称なので、\(P(Z \ge -a) = P(Z \le a)\) が成り立つ。これを使うと正規分布表(上側または下側)をそのまま参照できる。左右対称性は標準化した後に初めて使える性質であることに注意。

 

 

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