統計学

【統計検定準1級】2021年6月 論述問題 問1【解答例・解説】

解説

[1]

マルコフ性について、「現在の \(S_n\) の値さえ分かれば、過去の経緯は無視して未来を予測できるか?」を考えます。

例えば、\(n=0\) で \(S_2=0\) とする。このとき、過去のルートによって以下の \(S_3\) の動きが変わる。

  • ルートA:\(0 \to 1 \to -1\) と動いて \(S_2=0\) になった場合
    このとき \(X_2 = -1\) なので、次は \(X_3 = 0\) か \(-2\) です。
    従って、 \(S_3\) は \(0\) か \(-2\) になります。
  • ルートB:\(0 \to -1 \to 1\) と動いて \(S_2=0\) になった場合
    このとき \(X_2 = 1\) なので、次は \(X_3 = 0\) か \(2\) です。
    従って、 \(S_3\) は \(0\) か \(2\) になります。

同じ \(S_2=0\) でも、過去の経緯(\(S_1\) が \(1\) だったか \(-1\) だったか)によって未来の分布が異なるため、マルコフ性はありません


マルチンゲールについて、「一歩先の \(S_n\) の期待値は、現在の \(S_{n-1}\) と等しいか?」を考えます。

\[E[S_n | \text{過去}] = S_{n-1} + E[X_n | \text{過去}]\]

です。 ここで \(E[X_n | \text{過去}] = X_{n-1}\) ですが、これは常に \(0\) ではありません。

期待値が現在の値 \(S_{n-1}\) からズレてしまう(\(X_{n-1}\) だけ下振れ・上振れする)ため、マルチンゲールではありません

[2]

マルコフ性について、「ペア \((X_n, S_n)\) が今どうなっているか」が分かれば、次が予測できるかを考えます。

  • 次の一歩: \(X_{n+1} = X_n + \xi_{n+1}\)
  • 次の累積: \(S_{n+1} = S_n + (X_n + \xi_{n+1})\)

この計算には、過去(\(n-1\) 以前)の情報は一切不要で、今の \(X_n\) と \(S_n\) さえあれば十分です。

従って、マルコフ性を持ちます


マルチンゲールについて、ベクトルの期待値が \((X_{n-1}, S_{n-1})\) に戻るかを確認します。

第 2 成分の期待値は \(E[S_n | \text{過去}] = S_{n-1} + X_{n-1}\) となります。

これが \(S_{n-1}\) と等しくなるのは \(X_{n-1} = 0\) の時だけなので、マルチンゲールではありません

[3]

\[T_n = T_{n-1} + (X_n – X_{n-1})T_{n-2}\]

この式自体が \(T_{n-1}\) だけでなく、\(T_{n-2}\)(一つ前の過去)を直接使って定義されています。

定義に「過去」が含まれているため、今の \(T_{n-1}\) だけでは未来を決められず、マルコフ性はありません


期待値を計算してみると、

\[E[T_n | \text{過去}] = T_{n-1} + E[X_n – X_{n-1} | \text{過去}] \times T_{n-2}\]

ここで \(X_n – X_{n-1}\) は「ランダムウォークの増分」であり、その期待値は \(\pm 1\) の平均で \(0\) です。

すると、後半の部分が丸ごと消えて、

\[E[T_n | \text{過去}] = T_{n-1} + 0 \times T_{n-2} = T_{n-1}\]

となり、マルチンゲールである。

 

 

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